第九話『未熟なクソガキは理想像』2/4
斬「………………………………………………」
正明「ちゃんとした猿ぐつわが良かったんだけど、ボールしか無くてさ。こいつ普通にしててもばっちいのにって思ったら案の定ダラダラでさ」
斬「………………………………………………」
木葉「んーーーーーー! んぎーーーー!」
正明「あんまりエロさねーよな。どっちかっていうとばっちい」
鼻でこぴーん。
木葉「んがああああああああああああ!!!」
正明「ふふふのふ」
斬「………………………………………………」
正明「それよりもなんかコイツの眉毛触ってたらフサフサ感が心地良いぞ」
正明「んで、このマユゲと直接話して和解したい。どうすれば良いと思う?」
木葉「ころふ! ぜったひころふ! いまふぐころひへやる!」
正明「おいうるせえぞマユゲ。トニックシャンプー顔中に塗りたくってやろうかてめえ」
木葉「んぎいいいいいいいいいいいい!」
正明「はははは、面白いなコイツ。だんだん眉毛に愛着が沸いてきた」
木葉「こにょふうへつこのひゃにむひゃって! ころふ! ころふ!」
正明「そういや雀荘の近くにあるペットショップでさ、こんな感じの猿がいたんだよ。地味に可愛くて……ん、ジャン?」
斬「マサ……」
斬「それ、犯罪だよね。それも大きい罪になる」
え、ジャンは人斬るのが犯罪ってわからないのかな?
正明「まー細けえことはいいや。で、オレは木葉と仲良くなりたいわけよ。だからこうやって対話の機会を作ったと」
斬「……ごめん、手法が気になる。聞いてもいいかな」
正明「スケスケに金払ってバイクで後ろからパクった」
斬「…………」
正明「話戻すぞ。オレも誘拐とかはしたくないし、かといって一方的に殴られるのもイヤだ。なので……な」
斬「まず、介抱してあげたほうが良い。ギャグボールとってあげなよ」
ふむ。と、言われた通りに行動しようとして――
――気が付いてしまった。
正明「ギャグボール……へー。これギャグボールって言うんだ。SMプレイとかで使う道具よく知って……痛い! すぐ殴るのやめろ!」
斬「何でこんな低俗な道具持っているんだマサ!!」
正明「いや、だからお前これこそ論点のすり替……あんぎゃあッ!? スネ蹴らないでってば!!」
斬「答えろ!!」
正明「ええい話が進まん! まずは木葉が大事だ! 介抱をするぞ!」
あー、まずいまずい。ヤブヘビっつーんだっけこういうの。
木葉「ぷはっ……よ、よくも、よくもこの風雪木葉に! 下級ホストの分際で食物ピラミッドの頂点に君臨するこの……」
正明「うるさい。耳痛い」
木葉「むぎいいいいいいいいいいい!」
斬「……」
斬「はあ……頭痛くなってきた」
正明「正明の半分は優しさでできてるから大丈夫だよ」
斬「……」
スネを蹴り返してやろうと思うが、この女に暴力では勝てないことを身体は理解してしまっている。
斬「木葉、今丸いの外すね」
正明「フハハハ! ギャグボールだろ? 今さら知らないフリすんなよ」
正明「あぎゃあああ!? なんでもないです!」
酷い、ちょっとからかっただけですぐ暴力。こいつ絶対人権って言葉わかんねーだろ。
木葉「…………」
眉毛もビビってんじゃねーか。怖いなあ、ジャンは。
斬「喋れる?」
木葉「……ん」
斬「よかった」
斬「それで、確認だけどマサに変なことはされてないよね?」
木葉「……」
木葉「……ゆ、」
斬「ゆ……? マサ、ちょっときて」
正明「ヤダ。ジャンすぐ暴力するもん」
木葉「誘拐してるでしょーが!!!」
正明「……」
斬「ああ……うん」
おおう……ナイスツッコミ。
木葉「大体あんたの彼氏なんなのよ! 手紙で呼び出していきなり誘拐するなんて狂ってるわ!」
木葉「あんたもあんたよ! 彼女ならちゃんと彼氏繋ぎとめておきなさい」
斬「……」
斬「マサ。ボクは木葉の言い分が全面的に正しいと思う」
こいつ本当にちょろいな。
正明「あー、なんか飽きてきた。ジャン。腹減ったから寿司行こうぜー」
木葉「お前達ふざけんな、マジでふざけんな、殺す。絶対殺す!」
木葉「この風雪木葉に手を出したんだ。死ぬまで後悔させてやる!」
キーキーキーキー猿かよこいつは。
まあいいや。一服するか。
タバコに火を点ける。
斬「それで物は相談……なんだけど、今回の件、すべて無かったことにできないかな?」
木葉「できるか犯罪者共が!」
斬「ボクは違う!」
うっわ、ここに来て裏切ったよこいつ。仲間だと信じてたのに。
木葉「タダで済むと思うなよ。あんた達絶対生かしておかないから……!」
正明「おかないから……! うーん、いまいち萌えないツンデレ口調だなあ」
正明「生かしておかないんだからねっ! ってちゃんと言ってくれた方がキャラ立つんじゃん?」
木葉「下級ホスト! あんたは拷問した後に殺す!」
斬「今のはマサが悪い」
うーん、仕方ないか。
点けたばっかのタバコを踏みつぶす。
☆【BGM OFF】
正明「じゃ、適当に犯してから殺すか」
木葉「……え?」