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第九話『未熟なクソガキは理想像』1/4

◆【地元トンネル・夜】
バゴン!!!!

ドラム缶をヘコました音が空洞内に響き渡る。
今は通行止めになっているトンネルは、いつしか正明達が集まる場所となっていた。


正明「オレが何したっつーんだよ!?」
正明「清く正しく生きてるオレが! やましいことなんて何一つしていないこのオレが!」
正明「なーんでパチンコ店覗いて街歩いただけで盗人みてーに追われないといけないわけ!? あの生意気な小学生ちょっとぶっ飛ばしただろうが!!!」
斬「うん。答えを言っていると思う」

正明「ここ最近オレが何キロ走ったと思う!? イカロスよイカロス! 走れイカロス!」
正明「走れイカロス状態!」
正明「……」(チラッ)
斬「ごめん。そういうのは苦手だ」
やはりジャンをパートナーにしたのは失敗だったらしい。


正明「とにかく!!! オレはもう怒った!!!」
斬「あの……マサ。ボクもマサに怒っているんだ」
正明「うるせえな。今その話してねーだろ。論点すり替えるなよ」
斬「……」
正明「というわけで。ここに小学生を許さない会を設立します」
斬「言葉に語弊があると思う。それを言うなら風雪木葉を許さない会だと思う」
正明「じゃあそれでいいや。とにかく! もう許さんからな!」
斬「……はあ」

地元民でもあまり知られていない通行止めのトンネル。
わざわざそんな所に呼び出されたかと思うと、新しいことはなくいつも通り憤り正明を見て溜め息が漏れた。


斬「でも悪くない判断だと思う。今日、街では黒服の数が凄かった。確かにここなら見つからないと思う。そういう危険察知と用意周到さは言動と違って優秀だと思う」
斬「風雪木葉はマサの友達というだけで痛めつけようとしているみたいだ」
正明「あ?」
斬「大丈夫。木葉の強硬策は不発に終わった」
斬「マサには友達はいなかった」
正明「お前絶交」
斬「待ってくれマサ! 今のは酷い! これこそマサがよく言う誘導尋問だと思う」
正明「全然ちげーよバカなのかお前は! つーかオレ友達居すぎてやべーし! ってかジャンとかモチとスケスケとか、てめえらこそ便所飯の代表じゃねーか!」
斬「言葉を返すがマサ。それなら友達の名前を言ってほしい」

ッハ。馬鹿め。煽るなら相手を見て喧嘩を売れ。
正明「マルマン常連のハゲジャグさんだろ。スケスケ。オッパブキャッチの近藤さん。キャバ嬢の加奈子。雀荘ボーイの若禿げ父ちゃん。DJのたー坊。ラーメン屋の柴田っちに……」
斬「キャバ嬢の加奈子?」
正明「ああ。オレの百人居る友達の一人が加奈子だなあ。それがどうかしたか?」
斬「……別に」
正明「ストリートスナップした時一緒だったんだよ。あ、そうそう。モデルやってるそこそこイケメンの友達が合コンしたいってさ。ジャン友達集めてやろうぜ」

正明「ってあーーーーー! ジャンは友達がいないんだったー!」
斬「バカにするな!!! ボクだって少しぐらいは居るんだ!」
正明「え? 誰? ん? 誰なのかな? うん?」
斬「……」
斬「モチ……とか」
友達選べよマジで。心配だわ。

正明「ってちげーよ! お前らカス共がボッチかどうかなんてどうでもいいんだわ! とにかく! オレはもう許さないの!!!」
斬「いきなり思い出してキレないでくれ。ここで叫ばれると耳が痛い」

斬「それで、どうするんだい?」
斬「マサが斬れと言うのなら――斬ってくるよ」
正明「ジャンってバカ? 斬ったら死ぬだろ。犯罪よそれ」
斬「……」

んー、んー!

斬「?」
ドラム缶の反響で聞こえなかった。何か、鳴いている。

正明「どうしたい? っつーとアレだよ。ほら。オレって大人じゃん? ガキ相手にマジになるのってみっともないっつーか、な?」
斬「うん。そうだな」
あ、こいつ話聞いてねーな。まあいいけど。

正明「あのクソガキは文化の違いつーか教育がされてねえっつーか、まああれよ。話し合えばわかると思うんだ」
斬「そうかもしれないけど、彼女とマサがちゃんと話をできるとは到底思えない」

んー、んー。

斬「木葉は、本気でマサを狙っている。多分、冗談じゃ済まない事をしようと目論んでいる」
斬「それならこっちも――」
正明「だーからジャンは物騒だっつーの。平和に話しましょ」
斬「繰り返す。彼女との対話はできないと思う」
正明「うん。だから――」

蹴飛ばした隣のドラム缶を開ける。
その中には――、


△『イベントCG008・拘束された木葉』
正明「誘拐してみた」
木葉「んーーーー! んーーーーー!」
斬「………………………………………………」

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