第六話『亀裂のきっかけはとてもとても小さく』
◆【正明家リビング・昼】
冷蔵庫に冷やしてある麦茶を入れる。
私物を簡単に確認するが、カップ麺の買い置きや誰かが部屋に入った痕跡はない。
正明「……」
そういや、今回あのバカ長らく見てないな。
思い返すと、確かカツ丼食いたいとかわけわからんことほざいて、そのあと隣のカスが警察呼んで……で、帰ったらいないんだっけか。
それが――半年? いや、四ヶ月、か。
チッ。報復恐れて帰ったか。じゃあ始めからやるなよカスが。
四ヶ月間一個も減らないカップ麺を見て溜め息を漏らした。
正明「爆殺爆辛ラーメンが……」
・絶対にお子さんや、老人、体力のない女性は口にしないでください。
・当店の激辛ラーメン最上級を食べれない人はこの商品を手に取らないでください
・食中毒、及び体に変な症状が出ても当社は一切の責任を負いません。
くーーーーー! せっかく罠買ったんだから来てくれよ!
あ、そうだ。思い出した。隣人に嫌がらせやらないと。
よくも警察呼びやがったなカスが。あんなに懇願したのに、悪魔かこいつ。
嫌がらせプランを考えよう。ゴキブリ100匹ぐらい集めて隣の窓に……ってオレの部屋に入ったら死ぬほど嫌だな。
そもそもゴキブリを集めに歩き回るなんて無理。
そうそう、ゴキブリと言えば望代だ。
流石に連絡がなさすぎる。最近学園にも全然行っていないみたいだし……
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●【選択肢002:なんだかんだ気になる】
A.連絡してみる
B.誰がするか疫病神め!
●A.連絡してみる
『おめでとうございます! あなたは当社の3億円ポイント獲得の権利を手にしました! 今すぐこちらのURLをクリックし、登録と認証を済ませてください。尚、有効期限は本日23:59までです』
これでよし、っと。
●B.誰がするか疫病神め!
ボケがッ!!!
くたばったなら一報入れろや! 葬式でカラオケ大会してやるわカスめ!
って待て待て。あいつがパクったお金回収しねーと……うん。死ぬなよモチ。絶対早まるな。
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ぐー。
正明「……」
空っぽな冷蔵庫。どうしてもカップ麺を食べる気にはなれないので、家を出た。
しばらく歩くといつもの
平日の昼間というのに、夜と変わらぬ光景だ。
酔っぱらい「あー、飲みすぎた、うへへへ……」
昼間から頭にネクタイを巻いたバカが、自動販売機にカチャカチャと雑に硬貨を入れる。上手く入らないようで、落として拾ってを繰り返す。
酔っぱらい「あー……」
ボタンを押しジュースを取り出す。また呻き声をあげてゆっくりと足を進める。
通りすがりの人は皆ああはなりたくないと侮蔑の視線を送る。
正明「……」
そして対照的に誰もが憧れの視線を送るのはご存知竹原正明。スーパーイケメンボーイである。
正明「ジュース飲みたいなー、あ! 小銭が販売機の下に!」
そう呟くと、自動販売機の下を伺う。
正明「――フッ!」
そこに或るのは500円。我が日本国にて最強の硬貨である。
ヤバイ、街を歩くだけで金が増えてくるこの強運。自分の才能がありすぎて怖くなる。
……あん?
しかし手を伸ばすが、もう少しのところで届かない。
クッ、小癪な!
幼女「ままー、あのお兄ちゃんなにしてるのー?」
ママ「なにしてるんだろうねー。恥ずかしいねー」
正明「見せもんじゃねえぞ!」
ぐう……ギリ届かない?
だがそれは凡人の発想。肩の肩甲骨を伸ばせば届……いて、いたたた……あ、無理、これ無理かも。
??「あのー、なにしてるんですかー」
正明「ええい絡むな!」
△【イベントCG006・その出会いは一等賞で大事故で】
人間は環境が半分、資質が半分と言われる。
生まれてからの積み重ねで可能性が限られ。
だけど、良し悪しあれど分岐点もある。
例えば最悪な事故。例えば一等賞の宝くじ。
例えば運命の出会い。
竹原正明が後に自分の人生を振り返る時に語るだろう。
??「あのー、もしかして……お金とか、好きなんですか?」
正明「ああ大好きよ! だから絡むな!」
相手の顔も見えないこの出会いが、一等賞の宝くじで、最悪な事故で、
――良くも悪くも自分の人生を大きく変えられたと。