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第四話『その名はイッツーのジャン』2/2

◆【路地裏】
それからは早かった。

終始長身の女性に蹂躙され麻雀はお開きとなった。
正明は駅に向かってから折り返し、先程の雀荘方向へ踵を返す。

路地裏に曲がると、そこには先程の長身の女性が立っていた。

正明「よう」
女性「……」

手が届くほど歩みよると――女性は無言で頷いた。

女性「場所代引いて勝ち額は48,900円」
正明「しょっぺえなー……時間考えたらバイトとあんま変わんねーだろ。パチンコ代も回収できてねーぞ」
女性「マサ。最近パチンコ多すぎると思う」
正明「オレだって麻雀優先してーのよ? でもあれよ。メンバーがあんまいねーんだよ。近くじゃ結構有名なったみてえだし」

女性「前も言っていたよね。ネットで拡散されたんだっけ」
正明「そうなんだよあのガキ……麻雀強いアピールして負けたら拡散とかもう典型的なクソ大学生だろ。マジで死ねばいいのに!」
女性「そういえばモチは元気かい?」
多分『死ねばいいのに』っていうワードで望代の事を思い出したんだろう。

記憶を辿る。
最後にモチと会ったときは確か……

正明「オレの財布からパクった金でネトゲに課金した時か。あー、そうそう。あん時製造禁止になった瞬殺殺虫剤をぶちまけて泡吹いて……あれ、それからどうなったんだっけ?」
正明「ってあああああああ! 違う! カツ丼だ! 許さんぞあのクソ女!!!」
ショートヘアの女性は相変わらず元気そうだねと微笑んだ。


金髪男「はい、お前ら終わりでーす!」
正明「あん?」
陽気な声に振り向くと、ぞろぞろと若い兄ちゃんが集まる。

金髪男「とりあえず財布の中身全部出せよ。そしたら手加減してやるかもよ?」
正明「え、なにこれ。カツアゲ? 悪い人じゃん」
金髪男「お前が言うのかよスリーセブンの竹原君。ネタはあがってんだよ?」
女性「ふふっ」
金髪男「あー? なにが可笑しいんだ?」
女性「だってスリーセブンの竹原ってダサいよね」
正明「そこ!? ちょっと気に入ってるのに!」

金髪男「んでー、こっちが彼女さんのイッツーの斬ちゃんね」
斬「……」
正明「ふはは! イッツーのジャンだって。だっせええええええ! って痛い! なにするの!?」
金髪男「つーか、お前らイチャついてるけどわかってんのか? 今から死ぬのよ?」

捕食者の余裕か、囲まれた6名はゆっくりと近づいてくる。
正明「クソッ! 囲まれてしまった! どうするイッツーのジャン!?」
正明「アッ、痛っ! お前すぐ殴るのやめろデカ女!」
正明「あ痛ってえごめん! 違う! 今のは! 今のはあいつの高度な誘導尋問で、あ、違います! ジャンマジでかわいい! かわいいからスネ蹴らないで!」

金髪男「……」
金髪男「イチャついてんじゃねーよ。死ね」

言葉と同時に向かってくる街のチンピラ。

△【イベントCG004・相棒の名は四光院斬】
当初はわからなかったが、今となっては確かに不思議に思う斬の気持ちがわかる。
隠していない。"四光院斬"の腰にぶら下がってるのは木刀。
体格、筋力、スピード。男と女の持って生まれた質の違い。全てを上回る相手と過信したとして、さらには数が違う。

それでも、だ

きっと相手が拳銃を持っていたら例え子供でも尻尾を振って逃げるだろう。
それなら――刀は?

△【CG終了】
正明「……」
よくやった! イッツーのジャン! とか言ったらまた怒られるんだろうなあ……。
そんなくだらない妄想をして少しニタニタしたら、最後の一人が倒れた。

女が長物を持ったところで、勝てるものか。
その判断を見誤ったから彼らはここに倒れている。
斬「この人達どうする?」

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●【選択肢001:敗者の処遇】
A.財布の中身全部取る
B.そのまま帰る

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●A.財布の中身全部取る
正明「可愛そうだから財布とかポイントカードは返してやろう。あれ失くすとマジで面倒だからな。それは本当に可哀想。オレは一週間ぐらい寝れなかった人生の黒歴史だ」
正明「つーわけで中身だけ貰うぞ」
斬「わかった」

二人で手分けして回収していく。

正明「……ビックリするほどこいつら金持ってねーな。学生か?」
ぼやきながら、端数の割り切れない金額を自分の財布から補う。
5人居て、合計が21,162円。
正明「20円足して……ほい。渋沢と581円」
斬「うん」

平静を装っているが、こういうのはイヤなヤツだって知っている。
知っているから、やっているわけなんだが。

正明「そんじゃ帰るか。もしくは飯でも行くか?」
斬「ううん。今日は、もう帰るよ」
正明「オッケー。そんじゃまた明日な」

●B.そのまま帰る
正明「知らね。置いとけば?」
斬「……マサって、そういうところキレイだと思う」

あん?
斬「金にうるさいくせに、財布の中身全部抜けとか言わないんだ」
正明「それは追い剥ぎやないかーい!」
斬「……」
正明「……」
正明「いや、あのね。オレ本当はボケが専門でツッコミは……」
斬「あ、あはは……」
正明「いいよ無理に笑わなくて!!! 余計に苦しくなるの!!!」

斬「マサ。それより小腹空いた。これじゃあ足りない。なにか食べに行かないか?」
正明「奢り? 奢りだよな? え!? マジ!? いやー、悪いって!」
斬「ボクは奢ると言っていない」
正明「帰る」
斬「牛丼」
正明「焼き肉」
斬「牛丼大盛りでもいい」
正明「ッハ。オレがそんな……」
斬「トッピングも付けていい」
正明「……」
正明「行こうか、ジャン」

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