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第二話『例外の職員会議』

◆【職員室・昼】

風雪学園。
偏差値60のこの学園は、4年前にある企業に買収された。

そこの職員室ではいつもの愚痴が巻き起こる。

新人教師「竹原正明を退学にしましょう」
その力強い言葉に、周囲はまたかと失笑する。

教師1「君はまたか……気持ちは分かるが、以前に金輪際その話しをしないと決めたじゃないか」
新人教師「でも! 飲酒喫煙ギャンブルに加えて暴行や人身売買、麻薬の密売までやっている噂があります! 暴力団との関係もあるとか!」

いくらなんでも一学園生がそこまでやっていないだろう、と断言できないところが彼にはある。
公務員や教職員は真面目な人ほど早く退職すると聞くが、まさに彼はその例に沿うかもしれない。

教師1「それはあくまで噂であって、うーん、警察に捕まってからの……」
新人教師「それじゃあ遅いんですよ! 我が学園の名誉を大きく損ねます!」

理事長「沖原君。我が学園は学園長の方針により特待生への処罰は"例外"を除き行わないと決めている。それは以前話ましたよね」
新人教師「聞きました! ですがあいつは例外中の例外ですよ! それに特待生ってあいつはもう陸上部を退部しています! なんの功績もありません!」

まあまあまあ、と理事長が宥める。

理事長「彼の貢献や才能はどうでもいい。大切なのは、我が風雪学園は才能があるとみなした者に多大なる恩恵を与える。この事実のみだ」
理事長「仮に彼が全国優勝しようとオリンピック記録を更新しようと、反対に本当に人身売買や麻薬をもし行っていようと、それこそ対応を変えてはいけない」
理事長「君がたかが学園生に憤るように、たかが学園生に大人が顔色を伺ってはいけない」
教師1「沖原先生。我が学園は私立だ。もう少し冷静になりたまえ」
新人教師「……」

とても納得できない表情で、結局はいつもこうやって丸め込まれてしまう。

だが今日は珍しく食い下がった。
新人教師「理事長は、例外を除きとおっしゃいました」
新人教師「それなら例外とはなんでしょうか?」
至極もっともな意見。苦笑いを向けると神妙な溜め息が漏れた。

理事長「その件が今日の職員会議の本命だ」
理事長「学園長――例外が、この学園に来る」

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