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夜の王女

「これで終わりだ」
そう叫びながら剣を振り下ろすと、見事に命中し相手を仕留めることができました。
こうして無事に勝利を収めた俺たちは喜びを分かち合いました。
その後、ギルドに戻ると報酬を受け取ることができましたのでこれでしばらくは生活できそうです。
ただ、お金だけでは限界がありますし、そろそろ住む場所を探す必要があるなと思っていた矢先、彼女が話しかけてきました。
(ねぇ、一緒に暮らさない?)
突然の申し出に驚いてしまいましたが、冷静に考えてみると悪くはない提案だなと思い承諾することにしました。
これからどうなるか分からないけどとりあえず頑張っていこうと思います。
それから数日後のこと、俺と女神様は二人で旅をしていたのだが、なぜか周囲から注目を集めているようだったが気にしないことにするしかなかったのである。
その理由はすぐにわかったからだ。
というのも、この街に来たばかりの俺たちであったが何故か既に色んな人から声を掛けられていたのだ。
それも老若男女問わずという感じである。
最初は気のせいかと思ったんだけど、どう考えても普通ではない雰囲気を感じて怖くなってきたんだよ。
何か嫌な予感しかしないんだよなぁと思っていると案の定というか予想通りの展開になるのだった。
何と俺達の前に現れた人物というのがとんでもない大物だったんです。
その人物とは一体何者なのかと言うと、なんとこの国で一番偉い人だったのです。
当然、俺達は慌てて平伏しようとしたが止められた上に名前を聞かれたので素直に答えたんだ。
そしたら、 何故か驚かれたんだが何でだろう?
いや、確かにいきなり現れて偉そうにしたら驚くかもしれないけど、でもそこはもう少し取り繕って欲しかったぜ全く、そんな事を考えていたら、突然王様から
話しかけられたのでびっくりした。
「お主達の活躍は聞いているぞ、よくやってくれた」
と言ってきたので、お礼を言った後で聞いてみたところ、何でも最近魔物の被害が増えているらしく、
その対策のために勇者召喚を行ったらしいのだそうだ。
なるほどそういう事だったのか納得がいった。
だからあんなに注目されてたんだな納得しかけてたら、急に腕を掴まれたと思ったら引っ張られたので何事かと思って見てみると、
そこには一人の少女がいた。
その少女は俺と同じくらいの年齢に見えたが、よく見ると耳が尖っていたことから人間ではないと分かった。
だが、それ以上に驚いたことがあった。
なぜならその少女はとても美しかったからである!
髪は金色で瞳は青色をしていて顔立ちはとても整っておりスタイルも良いためモデルのような印象を受けた。
そんなことを考えていたら彼女に声をかけられたためドキッとしたことは言うまでもないことだが、平静を装って返事をすることにした。
すると、その少女は俺に向かってこう言ったのだ。
「私はこの国の王女で名前はリリアと言います、貴方の名前を教えてください」
そう言ってきたため、俺も自己紹介することにした。
ちなみに、彼女の容姿については事前に聞いていたため知っていたため問題なかった。
そして、お互いに自己紹介を終えると本題に入った。
「実は貴方にお願いしたいことがあるんですけど聞いてもらえますか?」
と言われたので了承したところ、その内容を聞いて驚愕することになった。
その内容というのは、魔王を倒して欲しいというものだったからだ。
それを聞いて驚いている俺に構わず話を続ける彼女だったが、俺は断った。
せっかく平和にスローライフを送れそうだったのに、わざわざ危険な目に遭う必要はないと思ったからだ。
それに俺には彼女という大切な人がいるのだから尚更だ。
それなのにどうして引き受けなければならないのか理解できなかった。
それを話すと王女はわかってくれたらしく引き下がってくれたようだ。
代わりに作物を下さったのでそれをありがたく受け取っておいた。
その後は宿に戻って休むことになったわけだが、その夜のことだった。
誰かが部屋に入ってきた気配を感じ取った瞬間、押し倒されてしまった。
目を開けるとそこにいたのはアリア様であった。
どうやら、殺そうとしているらしい。
抵抗しようにも力が強くて振り解けそうにないようだ。
俺はそのまま、剣をとるとさやから抜き放った。
そこには、アリアという名前のヴァンパイアが立っていた。
彼女は俺を本気で殺そうとしているらしい、
「なぜですか」
「貴方が、邪魔だからよ」
そう言いながら襲いかかってくる彼女をなんとか躱しながら反撃の機会を窺うものの中々隙を見出すことができないまま時間が過ぎていった。
このままでは埒が明かないと判断した俺は覚悟を決めることにした。
そして、ついにその時が来たことで一気に距離を詰めると、渾身の力を込めて斬りかかったのだった。
しかし、それが仇となったようで避けられることなく直撃したはずだったのだが、なんとすり抜けてしまったのだ。
動揺する俺を他所に彼女は再び襲い掛かってくるのだった。
今度は首筋に噛み付かれてしまい血を吸われてしまうことになるのだが、その時に感じた快感によって力が抜けていき動けなくなってしまった
ところに更なる追撃を受けて意識を失ってしまった……。
気がつくと、ベッドの上に寝かされていたようだった。
俺がゆっくりと起き上がるとメンバーの聖女が解毒の魔法を使ってくれていた。
おかげで助かったようだが、まだ頭がボーッとしている状態だったために上手く思考が働かず、ぼーっとしたままでいると、不意に声をかけられて我に返った。
見ると目の前にいたのは女神様だった。
「大丈夫ですか!?」
心配そうに聞いてくる彼女に大丈夫だと答えると、安心した様子で胸を撫で下ろしていた。
その様子を見て申し訳ない気持ちになった俺だったが、同時に感謝の気持ちもあったために自然と頭を下げていた。
それを見た彼女は驚いていた様子だったが、すぐに笑顔になるとこう言ってくれた。
「気にしないでください、困った時はお互い様ですから!」
そう言うと俺の手を掴んで立たせてくれた後、部屋を出て行こうとするのを見て慌てて呼び止めた。
振り返ると不思議そうな顔をしてこちらを見ていた為、恥ずかしくなりつつも勇気を出して告白してみたところ、
意外にもあっさりと受け入れてもらえたことに驚きながらも嬉しく思っていたら、
向こうからも好きだと言われてしまって思わず泣いてしまった。
そんな俺を見て彼女も泣き出してしまったものだから余計に収拾がつかない状況に陥ってしまっていたが、
それでも幸せであることに変わりはなかった。
その後、落ち着いたところで改めて話をする事になったのだが、そこでお互いのことを語り合う中で意外な事実を知ることとなった。
それは、彼女が元々は男だったということなのだが、ある日を境に女性になってしまったというのだ。

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