第12話 問題の自主映画
「しかし、今度の『あれ』。良かったんですか?本当に市からの上映許可が出たんですか?実は市の担当者に隠れて上映しようとしていて後々揉めるなんてことは僕は御免ですからね」
上着の襟が裏返しになっていたのに気づいた誠がそれを直しながらそう言った。誠の『あれ』と言う言葉に自然とカウラの笑いが引きつったものになり、そのままアメリアに視線が向いていた。
カウラの視線で『あれ』が何かを悟ったアメリアの顔が明らかに不機嫌そうになったので、誠は自分の言葉が足りなかったことを悟った。
「いえ!自主制作映画と言う発想は良いんですよ……でも……あの主役が小夏ちゃんなのが……あの子隊員じゃ無いじゃないですか。それにあの映画の予算ってうちのあの島田先輩が地球にフルスクラッチした高級車を地球の大富豪に売って稼いだ裏金で出てるんでしょ?だったら余計部外者を巻き込むのはまずいんじゃないですか?」
アメリアの顔がさらに威圧的な表情へと変わる、それを見て言葉をどう引っ張り出そうかと誠の頭は高速で回転し始めた。
「言いすぎました!訂正します!あの映画は素晴らしいです!アメリアさんの才能の片鱗を感じさせます!」
身の聞け権を感じた誠は必死になってアメリアに言い訳をした。
「どう訂正するのかしら?誠ちゃん……あの映画のどこに問題が有るとでも?あれは私の苦労の台本から生まれた傑作なの!だからそれを非難するなんて私は絶対に許さないの!それに私に才能が有るのは当然!これまでは隊長に邪魔されてその一部しか開花していなかったけど、今回の作品でそのすべてが開花したのよ!もしかしたらマスコミとかも来ているかも!」
アメリアはそう言うと着替え終わったばかりの誠の両脇をくすぐった。
「くすぐったいですよ!アメリアさん!悪かったです!訂正します!あれは傑作です!出演している僕が言うんだから間違いありません!」
なんとかアメリアの許しを請おうと誠は必死になって心にもないことを口にした。アメリアはようやく納得したように誠から手を離した。
「そう、それで良いのよ。ちゃんと天才である私を認めれば許してあげるわ。あとは観客の反応を見るばかり……それとも何?誠ちゃんはかえでちゃんとの濡れ場有りのポルノの方が良かったの?まったく『許婚』らしくよく似てるわね、考え方が。まあ市のチェックの段階で没になってやっぱり私の作品が採用されることになるのは目に見えてるけど」
誠は『許婚』である露出狂のかえでの話をされることがアメリアには弱点と認識されていた。
「嫌です!かえでさんは露出狂だから裸を見られるのは大好きでしょうけど……と言うかあの人に任せると無修正で本番アリのとんでもないAVを市民会館で流すことになりますよ!しかもあの人は相手役の男優に僕を指名しますよ!そんな公衆の面前で童貞喪失なんて僕は嫌です!」
誠はかえでの変態性は良く分かっていたのでそう言った。先ほど知らされていたが、今日のかえでは下着を着ていない。そのことを想像すると誠の妄想力にさらに歯止めがかからなくなってきた。
「そうでしょ?それを防ぐためにも立派な作品を用意する必要が有ったの。お子様も鑑賞可能な健全無比な作品をね。そのくらいのことは大人なんだからちゃんと理解してちょうだい」
得意げなアメリアに誠はあの作品が本当に健全と呼べるものなのか疑問に思っていた。