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第14話 大学時代の友達と久しぶりに集まったら暗い過去を仄めかすメッセージが届くけどマジで誰も心当たりなかった

 久々に集められた親友たちのもとに謎のメッセージが来て事件に発展するみたいなのあるじゃないですか。

 あれやろうとしてる人に言いたいんですけど、ちゃんと色々確認して続けた方がいいですよ。

 なんでこんなこと言うかっていうと、この前マジで迷惑なことに巻き込まれたんですよ。


〜 〜 〜


 10年来の親友の|頼光寺《らいこうじ》って女友達がいるんですけど、彼女とは大学も同じだったんですよ。そこでワンダーフォーゲル部っていう、実質ただの遊び仲間集団みたいなところに入ってたんです。そこで女4人グループでよくつるんでました。

 そんな頼光寺、5月5日が誕生日だったんです。そこで久々にワンダーフォーゲル部だった4人を巻き込んで私がサプライズで祝おうと思ったんです。みんなで会うのはもう何年か振り。

 私だとバレないようにみんなにとある喫茶店に集まるように伝えて、当日、顔を合わせたんです。

「誰が呼んだの?」
「私じゃないよ」
「なんか不気味……」

 みたいにみんなソワソワしてんです。私、ニヤニヤしないようにするの大変でした。

 喫茶店なんですけど、ステンドグラスのそばの席がSNSでバズってるんですけど、大体いつも予約で埋まってるんです。でも、その日は予約が直前でキャンセルされたらしくて、運良くステンドグラス席に座れたんです。頼光寺にいいサプライズできるぞとか思って、幸先いいなと感じてました、この時は。

 でもね、頼光寺がテーブルの裏になんか封筒が貼りつけてあるのを見つけたんです。

「なにこれ、『愚かなる者たちへ』だって。これ、私らを呼んだ人の仕掛けたやつだよ」

 頼光寺がウキウキで封筒開けるんです。待って、私知らない。そんなん仕掛けてないから。って言っても、私がみんなを呼んだのバレたくなくて黙ってたんです。

 封筒の手紙をざっくり要約すると、

『7年前のあの嵐の夜のこと、忘れたわけじゃないだろうな?』

 みたいなメッセージなんです。これ、明らかにここの席に座るはずだった人たちの暗い過去に触れる告発文じゃん。ここから人間関係が崩壊するドラマ始まるじゃん。衝撃の結末とかが待ってるやつじゃん。

「えー、なにこれ、ウケるんだけど」
「7年前っていつよ?」
「嵐の夜に出歩かないんだけど」

 そうなんです。私たちってそういう後ろめたい過去ゼロなんですよね。いや、もちろん喧嘩とかしますよ。でも、絶対その日のうちに仲直りしようって決めてたんですよね。それぞれ高校の時に人間関係で悩むことが多かったって共通点があったんでね。我ながらいいやつが集まった4人だなって思うんですよ。

 だからなのか、みんな、なんかワクワクしてるんです。なんらかのサプライズがあるってバレ始めてんです。訳わかんない手紙のせいで!

 手紙には最後に「14時、電話を待て」とか書いてあるんです。うるせーよ、全部ここに要件書いとけよ。


※ ※ ※


 14時になったら、喫茶店のマスターがやって来たんです。

「あの、皆さんあてにお電話が……」

 みんなニコニコしてんです。私、文句のひとつでも言ってやろうと思って、カウンターの中の電話に向かいました。頼光寺たちが「がんばれー」とか言ってる席からこっち見てるんです。せっかくのサプライズが……。

『覚悟はできたかな?』

 受話器の向こうから気取ったやつの声がします。ガチャ切りしてやろうとしたけど我慢しました。私はえらい。

「いや、あのね、よく確認して……」

『ふふふ、そんな高圧的な態度でいいのか? お前たちの大切な人がどうなってもいいのか?』

 予約してた人たち、勝手に人質取られてんじゃん。自分たちが知らないところで弱み握られててかわいそすぎる。というわけで、顔も知らない人たちの大切な人たちに迷惑かかんないように大人しく話聞くことにしました。めんどくさすぎてピザトースト胃から出そうでした。

『これから、お前は席に戻り、Discordで私からの指示を全員で聞くんだ』

「え、Discord? インスタじゃダメですか? Discord入れてないんですよ」

『私がインスタを入れていない。Discordにしろ』

「いまどきインスタ入れてないって珍しいですね……」

 結局、Discordを入れて、サーバーとやらの情報を聞いて席に戻りました。私の頼光寺へのサプライズ、いつ始めればいいかな? 実はマスターに合図したら巨大パフェ準備してもらうことになってんのよね。この勘違いバカ片付けてからでいいかな。長引いたら最悪だよな……。

 いや、まあ、この人には悪いけど、嵐の夜のこととかどうでもいいんですよね。なんとかしたかったらもっと前にやればいいじゃんとも思ってた。なんでこういう人っていちいち何年か経ってからアクションするんだろう?


※ ※ ※


 テーブルにスマホ置いて、Discord立ち上げたんです。

『お前たち、今は己の心の中で罪悪感が渦巻いていることだろう』

「聞いたことない声じゃん」
「私たち以外が呼んだのかな」
「罪悪感ってなに? ダイエット中に甘い物食べた、みたいなやつ?」

 キャハハとかみんなが笑ってんです。いや、そりゃそうなるよな。みんなで集まると大学のノリに戻っちゃうんですよね。私も私で、いつみんなを呼んだのバラそうかなとか、このDiscordのバカとは関係ないってちゃんと説明できるかなとか考えててあまり話入ってこなかったんですよね。

『だから、お前たちが7年前の嵐の夜に──』

「知らねーっつーの! 誰だよてめえはよー!」

 気づいたらDiscordの人とみんながめっちゃ喧嘩してんです。やべって思ったけど、もういいかって思っちゃって。ここの席予約しといて来ない方が悪いしね。しかも、Discordの人の話からするとなんかやらかしてる可能性高いもんね。

『お前らと話してたらイライラするわ、もう!』

 Discordの人、めっちゃキレてる。さっきまでの主導権握ってますみたいな余裕がなくなってて笑えましたね。やっぱり現場に出向いてやんなきゃダメだよ、こういう計画って。楽しようとするから変なことになんだよ。古畑任三郎の福山雅治の回でもそんな感じだったじゃん。

「さっきからなんなの、その7年前の嵐の夜って? さわりしか言わないから変なことになってんだって。話してみ?」

 頼光寺が切り込みます。この子、わりと神経が図太いところあるんですよ。

『だから、|小田倉《おだくら》|美南《みなみ》が事故で死んだだろ! お前たちがやったんだ! 事故に見せかけてな!』

 Discordの人からすると、もっとストーリー進んでから暴露する予定だったんだろうね。でも仕方ないよね。私たちめっちゃ部外者だし。

 案の定、みんなポカンとしてます。でも、いいやつなんで、ちょっとずつ話を聞き出してたら、Discordの人、我慢できなかったのか、ポロポロ語り出すんです。

『──……俺は、美南を幸せにすると決めたんだ』

「いや、でもさ、そういうことってちゃんと言葉にして伝えないとダメなやつじゃん。ちゃんと言ったの?」

 気づいたらなんか恋愛相談みたいな空気感になってるんです。

『言葉には、してない』

「ほらー、ダメだって! 思ってることは口に出さないと! だから、小田倉ちゃんも分かんなくてすれ違ってたわけじゃん」

『いやまあ、そう言われるとそうなんですけど……』

 Discordのやつ、この流れでなんで私の友達に言いくるめられてんだよ? ちょっと過去の自分の不甲斐なさ反省し始めてんじゃん。もう復讐よりも自分が変わるべきだったんだみたいな方向に行き始めてんじゃん。

「じゃあさ、大変なことあると思うけどさ、頑張んなよ」

『はい、なんかすいませんでした』

 結局、Discordの人、私の友達に諭されて復讐諦めたみたいです。

 ちなみに頼光寺へのサプライズは成功しました。喜んでくれてよかっです。

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