第5話 とりあえず見せ場も終わったと言うことで
「よかったわね、何も起きなくて……誰か落馬でもしたらまたひよこちゃんに手間をかけちゃうところだったのに。落馬は結構重大な怪我になるものね。まあ、ひよこちゃんの『ヒーリング能力』が有ればどんな怪我でも治っちゃうんだけど」
そう言うとアメリアはカウラの肩を叩いた。一番落馬の危険性の高かったカウラは恐る恐る頷いた。
「それじゃあ着替えましょう」
微笑みながらアメリアはそう言うとカウラについて時代行列を支える裏方達の群れる境内の裏手の広場に足を向けた。
そこには仮装をしない裏方役の技術部の整備担当の面々や運用艦『ふさ』のブリッジクルーである女性士官達が行列を終えて帰ってきた隊員の着ている鎧が壊れていないかチェックしたり、すでに着替えを終えた隊員に甘酒振舞ったりと忙しい様子を見せていた。
「アメリアさん!ようやく戻って来たんですか……時間より遅いですよ」
そんな忙しく立ち働く面々の中からそう言って技術部整備班班長島田正人准尉と運用艦ブリッジクルーのサラ・グリファン中尉が駆け寄ってきた。二人ともすでに東和警察と同じ深い紺色の勤務服に着替えていた。
「それに早く着替えた方がいいですよ。何でもあと一時間で豆を撒きにきたタレントさんが到着してこの場所使えなくなるみたいですから。そうなったら寒空の下で下着姿を人前に晒すことになりますよ。日野少佐みたいにそれが好きなんだったら別にいいですけど」
そう言うと島田はきょろきょろと人ごみを見回した。
「それは急がないとな。神前、とっとと着替えるぞ」
カウラはそう言うと誠をテントの中に連れていこうとした。
「あのー僕は一応男なんで。別の所で着替えた方が……」
誠にも変態のかえでと違い羞恥心は有った。
「どうせ鎧を脱ぐだけだ。下着まで脱ぐわけではない。日野少佐ならどうだか知らないが私はそこまで考えていない」
そう言ってカウラは強い力で誠をテントに引っ張り込もうとした。
「そうですよね。鎧を脱ぐだけですものね」
なんとなく先ほどのかえでに迫られた時のことを思い出していた自分を恥じるようにして誠はカウラの後に続いた。