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第六話 煙術

 甘寧達を配下にした鄧艾の噂は江東の支配者、孫権(そんけん)に伝わり、大都督の周瑜(しゅうゆ)に助言を求める。

 すると。

「我が水軍の要である甘寧や直属兵を勝手に家臣にし、更に黄蓋をも破り、そして、水鏡先生の弟子の中でも一二を争う鳳統や黄忠、魏延という猛将迄配下にしている童らしい。まだ、幼いが成長すれば、我らの脅威に成りましょうぞ。奴らに刺客を向けましょう」

「その刺客は誰が適任か?」

「この周瑜自ら二千の兵を率いて抹殺致します」


 
 その頃、危険を感じて長江を海にまで向かい鄧艾は前世の故郷、日の本に向かうべく、甘寧に水軍の指揮を任せて休んでいると。

「後方から約二千人の兵か乗ってる水軍が近づいている。しかも旗は大都督の周瑜だ。今。俺達の水軍は向かい風で追い付かれてしまう」

「ならば、この忍法煙術が良い」

「忍法煙術とは何ですかい?」

「これが決め手だ」

 と壺を指差す。


「なる程。良し。野郎共! 俺達の強さを思い知らせてやれ!」

「「「おおお――!」」」

「「「勝つぞ!」」」





 周瑜の水軍が間近に迫った時、何と炎の波が向かって来た。

 更に甘寧の水軍は火矢まで飛ばして来る。


 流石の中華一の水軍を率いる周瑜は最小限に被害を抑えて追撃しようとしたが、煙を多く吸い込んで周瑜も兵達も体調不良になり不可能であり、煙で視界を奪われた為、甘寧の水軍の姿を見失う。

「おのれ! 戦わずして勝つだと! 戦う価値すらないのか? この大都督周瑜が! 甘寧! そして鄧艾! この屈辱、死んでも忘れぬわ!」

 周瑜は自らの剣を甲板に叩き付けた。

 


 追撃を振り切った鄧艾達は船の甲板で酒宴を開き。

「周瑜よ。まだ青二才であったな。わっはっは」

「鄧艾様はまだ童ではないですかい。 わっはっは」

「甘寧の申す通りだ師弟よ」

「鳳統師兄の言う通りだな。おいら、まだ、童だったな」

 だが、心の中で鄧艾も鳳統も、周瑜は次は恐るべき敵と成るだろうと確信していた。








 そんな物思いにふけっでいる時に黒い雨雲が現れ、嵐となる。

 余りの暴風雨で甘寧水軍は壊滅した。




 孫権(二十三歳)周瑜(三十歳)





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