第五話 水賊
赤壁にて孫尚香や黄蓋に目を付けられた鄧艾は、警戒しながら
以前、水鏡先生から江東水軍には黄忠と魏延に負けず劣らず武勇に秀でている水賊出身の猛将がいると聞いた事がある。
前世、武田信玄公の所有していた文献の中に、孫家随一の猛将と同じ人物で名を
甘寧は鈴を付けた黄色の鎧を纏い、武器は刀剣や槍などでは無く、
軍事調練を眺めて観ると、縦横無尽にて鉄鎖を振り回して兵を薙ぎ倒している。
また、甘寧直属の兵、約三百人も中々の強者らしく圧倒的だ。
甘寧と直属の兵を得れば大きな戦力になる。
そこで、甘寧に喧嘩を売り挑発する事にした。
「お――い! 水賊風情の甘寧と直属兵! この鄧艾と勝負をしろ!」
血の気が多い甘寧は此方を向き、直属兵に命じた。
「乳離れの出来ない童が俺達を挑発している。野郎共! 水賊の恐ろしさを教えてやんな…」
「「「へい!」」」
元水賊の直属兵達は競う様に舟で鄧艾いる岸に迫って来たが、急に動けなくなった。
「動けねえ!」
「頭! 助けて下せえ!」
実は河に網を掛けて罠にしていた。
「鳳統師兄。策が上手くいったね」
「鄧艾もこの程度の策は余裕で思いついたであろう」
「やい! 甘寧! 子分達は捕らえたぞ! 次はお前だ! 掛かって来い!」
甘寧は鬼の様な形相で怒りを露わにして、動けない舟を足場にして岸に揚がり鉄鎖を振り回しながら襲い掛かった。
俺は甘寧に対して一ノ太刀や発勁は鉄鎖の間合いが広すぎて届かない。
ならば!
ズドーン!
甘寧の右頬から血が流れた。
甘寧や黄忠、魏延、鳳統は鄧艾が奇妙な小さい筒の武器で鉄鎖の間合いよりも遠くから攻撃したのを理解した。
「おいらの考案した雷銃はいつでもお前を殺せるぞ! 甘寧!」
鄧艾の持ってる雷銃とは? 戦国時代、忍び達が切り札として使う武器、火縄銃を小型にし、火縄の代わりに火打ち石を使う忍び銃であった。
「負けたぜ童……。殺せ……」
甘寧は死を覚悟したが、鄧艾は真摯に眼を向けて。
「甘寧と直属兵はおいらの配下にしてやる。命を無駄にするなよ」
「俺の完敗だ! この甘寧と直属兵は鄧艾様にお仕え致す!」
こうして鄧艾は甘寧と直属兵を配下にした。
甘寧(四十二歳)