第151話 深夜に及ぶ作業
「じゃあ、私達は寝るけどがんばってね」
そこにはアメリアの姿があった。いつも寮で着ているどてらを着ているアメリアはたぶんいつも通り深夜ラジオを聞いていたのだろう。アメリアは扉の影からささやくように告げて立ち去った。少しはあの人も気を遣うのかと失礼なことを考えながら誠は細かい部分にペンを走らせた。
「喜んでくれればいいんだけど」
そう思いながら誠は休まずに一気に仕上げようとペンを持つ左手に集中した。
作業は進んだ。細かい修正を残すのみとは言え、これが一つズレただけですべてが台無しになると思うと誠は緊張した。
「カウラさん。待っててくださいね」
自分自身に言い聞かせるようにそう言ってティアラやネックレスなどの細かい部品に筆を入れる作業を続けた。
もうアメリアも眠りについたのであろう。家からは人の気配が消えていた。
誠はティアラに最後の墨を入れるとペンを置いた。
「完成だ……」
もう三時を過ぎていた。とりあえずインクが乾くのを待ってそのままプレゼント用に包装をすればすべて終わる。ここまでなんとか誠はやってきた。
「ああ、カウラさん。喜んでくれると言いな」
プレゼント用の包装紙を確認しながら誠はそうつぶやいた。
これまでの苦労が一気に報われた。そんな達成感に誠は包まれてティアラに居れた最後のインクが乾くまでの時間を待つことにした。