第三話 勝負
晴天の道すがら気ままに二人旅をする鄧艾と龐統はある目的を持って荊州南部、
実は水鏡先生の元で学んだ時に優れた武将が長沙に在住している事を知り訪ね、あわよくば配下にする為である。
その武将は白髪の老人ではあるが、鍛え抜かれた肉体を持ち、
やがて長沙の黄忠の屋敷に着いた時にある声が聞こえた。
「俺様か長沙一の武将、
「わっはっは! 鼻垂れ小僧が生意気な! 格の違いを見せ付けてやるわ! 泣いて吠え面をかくなよ!」
「上等だ! 老いぼれ!」
鄧艾と龐統は塀によじ登り試合観戦する事にした。
黄忠は噂通り背中に巨大な弓を身に着け、両手で戟を振り回し、二十代後半と見られる、黄忠に匹敵する強靭な肉体を持つ魏延は戟を構えて襲いかかる。
やがて四十合程打ち合いになり、魏延の戟が弾き飛ばされた。
「まだまだだな。魏延よ! 猪突猛進では儂には一生勝てぬわ! 母の乳でも吸っているのが似合いぞ!」
すると、塀から観戦していた鄧艾が、あるとんでもない発言をした。
「黄忠殿勝負しろ! この鄧艾に矢を放て! もし、矢をこの木の棒で弾き飛ばしたら、おいらの配下になれ!」
「見知らぬ童よ! 良い気迫だが歳が足りぬわ!」
「黄忠殿は長沙一、否、中華一の腰抜けであったわ! わっはっは!」
黄忠は鋭い眼光を鄧艾に浴びせながら。
「良かろう……。儂の様な中華一の武人を侮辱するとは命が欲しく無いらしいな童! 望み通り死ぬが良い!」
瞬く間に弓を番え放つ。
鄧艾の眼前に鋭い速さの矢が飛んで、眉間に突き刺さるかに見えたが、何と! 鄧艾は木の棒で矢を神速の速さで弾き飛ばした。
実は鄧艾、前世では真田昌幸は当時、日本一の刀術の達人、
黄忠、そして魏延、龐統さえも驚愕した。
「見事だ童、否、鄧艾殿、儂の負けだ……。潔く配下となろう」
「俺様も感動した。この魏延も配下にして頂きたい!」
すると、鄧艾の右耳元で龐統が忠告を述べた。
「魏延には反骨の相がある。用心されよ……」
「わっはっは。おいらは表裏比興の者。反骨の相は親戚みたいな者。使いこなしてみるよ」
こうして黄忠(五十五歳)とおまけに魏延(二十八歳)が配下となる。