第123話 迫りくる期日
「そう言えば誠ちゃん。今日は22日よ。間に合うの?」
アメリアの言葉に誠は我に返った。さっとコタツを出ると立ち上がった。
「じゃあ、僕は作業に入りますから」
「はいはい邪魔はしねえよ」
出て行こうとする誠にかなめは投げやりな言葉をかけた。誠はいつものようにそのまま居間を出て行った。
階段を駆け上がり自分の部屋にたどり着いた。
誠はすでに準備ができている画材の揃った机を見つめてみるが、すぐに彼の右腕の携帯端末に着信があるのに気づいた。
『よう!ご苦労さんだな』
通信を開くと相手はかなめだった。ネットワークと直結した彼女の脳からの連絡。誠はしばらく不思議そうに端末のカメラを見つめていた。
『そんなに疑い深い目で見るなよ。一応アレはアタシの上司でもあるんだぜ。多少ご助力をしようと思って……これ』
そう言った直後、画像が展開した。
それは昼間の宝飾店で見たカウラのドレス姿だった。時々恥ずかしそうに下を向いたり、かなめ達から目をそらしたりして動く姿が映し出された。いつもの堅苦しいカウラの姿はそこには無かった。突然、演芸会で振られたシンデレラの役に当惑している新人女優のように誠には見えた。そんな感じにも見えて誠はうっとりしながらその動きを眺めていた。
そんなことを考えているといつものかなめの不機嫌な顔が予想できた。
「あれですか、録画してたんですか?西園寺さんの目を通して」
『まあな。せっかくアタシの目についているサイボーグならではの機能だから使わないともったいないだろ?』
引きつった笑みを浮かべているだろうかなめを思い出した。そしてそこにアメリアが突っ込みを入れていることも想像できた。
「ありがとうございます。早速保存しますね」
『ああ、それとこの動画は24日には自動的に削除されるからな』
「へ?」
誠の驚きを無視するように通信が途切れた。早速近くの立体画像展開装置にデーターを送信してカウラのドレス姿を映した。誠はただうっとりと見とれていた。
「まったく、スパイ映画じゃ無いんだから。そんな消去機能なんてつけなきゃいいのに」
かなめの嫉妬の混じった嫌がらせにニヤ付きながら誠はカウラの画像で自分の描く絵のイメージを膨らませていった。