第105話 自爆に沸く覗き魔達
「リンの奴とうとう本性を出しやがった!それをきっかけに坂を転がるように真っ逆さまだ!アイツが尖った石の上に正座しているところに石を乗っけて責められるのが好きなのはアタシも試したから知ってるんだ。アイツのマゾは筋金入りだからな!脳内まで虐められて快感に身もだえることが身についているんだ!いい気味だ!ざまーみろ!」
かなめは得意げにそう言った。
「そんなことを試したのか……時々、かえでの屋敷に貴様が出かけていっていると言う話は聞いていたがそんな拷問をしていたのか……やっぱり貴様も日野少佐と同じ『変態』だ。貴様も同類なんだ」
カウラはかなめが鬼の形相でリンに石を抱かせる様を想像してあきれ果てた調子でそう言った。
「カウラちゃん。かえでちゃんもリンちゃんもマゾだから拷問じゃなくて御褒美って言うのよ、ねえ!誠ちゃん!」
かなめが『女王様』なのは誠も知っていたが、ここまで本格的なサディストだったと言うことを知らされて誠は衝撃を受けていた。
「さあて、これからどこまで二人がいかに変態であるかが薫さんに知らされることになるんだわ。そうすれば『許婚』の話はパーよ。普通の神経の母親ならかわいい息子を変態女のところになんてやれないもの。これでかえでちゃんの『許婚』話は終了。私にもチャンスの芽が生まれるわけね」
アメリアは力強くそう言うとガッツポーズをした。
そこで携帯端末からは笑い声が聞こえてきた。
『そうなんですの。そうやって痛めつけられるのがお二人ともお好きなんですね?』
薫は嬉しそうにそう言っていた。
『え?』
誠達は自分達の考えが甘かったことをここで悟った。かなめの母、西園寺康子はかえでの性癖も含めて薫に話をしていたらしい。そしてそれを薫も認めた上で『許婚』と言うことになっている。携帯端末から聞こえるかえでとリンの変態トークに笑って答える薫の様子を察して誠達は恐怖に打ち震えた。
「かなめちゃんのお母さんの交渉術は凄いのね。これじゃあランちゃんの『恋愛禁止』命令が崩壊するのも時間の問題ね。さすがは『甲武の鬼姫』と呼ばれて甲武国の裏の最高権力者と言われるだけの事はあるわ。恐るべし」
アメリアは諦めたように異常な娘の異常な嗜好を懇切丁寧に説明しただろうかなめの母、康子に恐ろしさを感じつつ、その原因であるかなめに目をやった。
「神前……もう諦めろ。オメエにアタシが教えてやれることは色々ありそうだな。アタシが租界でSM嬢をしていた時のテクニック。教えてやるよ。立派なかえでの『許婚』になってくれ。アタシ等は所詮『甲武の鬼姫』と呼ばれたあのお袋の掌の上で動き回る孫悟空に過ぎなかったんだ。すべてはあの女の差し金だ。あの女には誰も逆らえねえ。それは甲武でも東和でも変わらねえ。その事実が分かったことだけが今回の収穫だ」
半分諦めたような調子でかなめはそう言った。
「ゲームだけじゃなくてリアルの趣味も母子で似てたのね……さすがにあんなプレイは私には無理だわ。私も誠ちゃんの事は応援しているわね。立派なかえでちゃんの『ご主人様』になるのよ」
アメリアも携帯端末から響いてくるかえでの得意とする被虐プレイの数々に向けてそう言ってあまりの出来事に固まっている誠の肩を叩いた。
「プレイってなんだ?それと二人の会話を聞いているとそんなことをしても痛いだけだろ。何が楽しいんだ?それと二人ともまるで神前が日野少佐と結婚することが決まったように話しているが、神前が認めた訳では無いだろ?なら関係の無い話じゃないか」
まだロールアウトして8年しか経過していないカウラにはかえでの話す快楽調教の意味が今一つ理解できないでいた。