女との闘い
しかし、相変わらず俺の体内には、呪いの力が残っているみたいです。
これを使えばあんな奴らに対抗することも出来るでしょう。
そう思った俺は、早速旅に出ることにしたのです。
旅を続けて5ヶ月ぐらいが経過した頃、ある森の中で立ち止まった俺は、
体の内側から異常なエネルギーが噴き出していることに気づきました。
最初は驚いてしまいましたが、その力に身を任せてみると体内に封じ込められている闇の力を解き放つことができたんです。
この力を使えば誰にも負けない最強の自分を手に入れることができるかもしれない。
そう思うと、興奮を抑えることができなくなる程でした。
そこで、早速試すことにしようと思います。
まずは、近くにあった大木に触れてみると、なんと簡単に折れてしまいまったんです。
これには自分でもビックリしました。
それから、近くにある大きな岩にも触れてみることにします。
そうすると今度は、簡単に砕くことができたんです。
まるで自分の身体じゃないみたいに思えました。
しかも、次にやることについても何と説明すればいいのか分からないぐらいに即効的な行動だったので、
我に帰るのに時間がかかりました。
自分が何をしたのかよく理解できていなかったのです。
それから、部屋に帰ってきた俺を出迎えたのは美しい長い金髪に、碧眼という特徴を備えたメイド服を着た一人の少女でした。
彼女の名前はエリーゼと言います。
その可愛らしい微笑みには、天使のような神々しささえ感じてしまいますし、
俺に向かってお辞儀をしてくれる姿にも見惚れてしまいそうなくらいです。
そして何よりも彼女の服装が、とても素晴らしいのです。
胸元が大きく開いたワンピースドレスから胸の谷間が見えてしまいそうで、
スカート丈も短く太ももが露わになっていて、とても刺激的過ぎます。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
彼女の声を聞くだけで心が癒されていくような感覚に陥ります。
「ただいま、エリーゼさん」
と返事をする俺ですが、内心ドキドキしています。
なぜなら、俺が今いる場所は自分の部屋だからです。
何故このような状況になっているのかと言いますと、それは昨日の出来事が原因なのです。
そう、あれは昨日のことでした。
ある日の朝、目が覚めると俺は見知らぬ場所にいたんです。
しかもそこは牢獄のような場所でした。
そこで俺は、自分が誘拐されたことに気が付きました。
一体誰が何のためにこんなことをしたのか、分からず困惑していると突然目の前に一人の女性が現れたのです。
その女性は自分のことを女神だと言っていましたが、俺には信じられませんでした。
何故ならどう見ても普通の人間にしか見えなかったからです。
しかし、彼女は構わず話を続けました。
「あなたは、選ばれし者なのです」
と、いきなり言われても意味が分かりませんでした。
どうやら彼女は、俺が異世界から召喚された勇者だと言い張っているのです。
しかし、俺にはそんな自覚は全くありませんでしたので、
否定しましたが信じてもらえませんでした。
それどころか、無理矢理連れていかれそうになったので逃げようとしたのですが捕まってしまい、
そのまま意識を失ってしまったんです。
そして次に目が覚めた時には、この部屋の中にいたという訳です。
最初は何が何だか分からなかったんですが、徐々に記憶が蘇ってきました。
俺は確かあの時に誘拐されてここに連れてこられたはずなんですが、
どうしてここにいるんでしょうか?
そんなことを考えているうちに彼女が話しかけてきました。
「ようやくお目覚めですか?」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りつくような感覚に襲われました。
何故なら目の前にいる女性が明らかに人間ではなかったからです。
「あなたは、何者なんですか?」
と尋ねてみると、彼女は微笑みながら答えました。
「私は女神です」
それを聞いた瞬間、俺は驚きを隠せませんでした。
何故なら目の前にいる女性がどう見ても普通の人間にしか見えなかったからです。
しかし、彼女は構わず話を続けました。
「あなたにはこれから異世界に行ってもらうことになりますがよろしいですか?」
と言われたので、とりあえず頷いておきました。
そうすると彼女が指をパチンと鳴らすと俺の体が光に包まれていくではありませんか!
「これで準備は整いましたので早速、出発しましょう」
と言われたものの、俺には全く理解ができませんでしたが、
とりあえずされるがままにしておこうと決めて、彼女の指示に従って歩き出しました。
それからしばらくして、辿り着いたのは、祭壇のような場所でした。
そこには、女神を名乗る女性がおり、俺が彼女に向かって言葉を発しようとすると、
その前に彼女が喋り始めました。
「はじめまして勇者様。私は女神アリアと申します」
そう言うと、彼女は自己紹介を始めました。
どうやらこの女性は本物の神様のようで、俺に使命を与えるために召喚したというのです。
ちなみに何故俺のことを勇者と呼ぶのかを聞いてみると、俺を呼び出した理由がまさにそれだそうです。
俺の家系は元々異世界で代々伝わる勇者の血を引いている家系だったらしく、
その血を引いた子孫が代々受け継がれてきたそうなんです。
そして俺の父親も異世界で生まれ育ち、今は行方知れずになっているとのことでした。
そんなこともあって俺に白羽の矢が立ったみたいです。
最初は戸惑いましたが、何故か現実感が無かったので、
すぐに順応することができたのは幸いでした。
「女神様、俺は勇者じゃないし、ただの農民でパーティーから追放されているので
それと俺はそんな家系じゃないからな」
と、反論してみましたが、彼女は全く動じませんでした。
それどころか笑顔でこちらを見ています。
「大丈夫ですよ、あなたならきっと立派な勇者になれますよ」
と言いながら俺に向かって近づいてきました。
思わず身構えてしまい、後ずさりしてしまいました。
しかし、それでも構わず近づいてくる彼女に対して恐怖を感じてしまったので、
逃げようと思いましたが体が動きません!
一体どうしてしまったのでしょうか?
必死になって体を動かそうとしましたがやはり動きません。
困り果てていると彼女が耳元で囁いてきました。
「無駄ですよ、あなたの体は私が支配しているんですから」
と言われて驚いてしまいました。
まさか俺が襲われるとは思っていなかったからです。
確かに見た目は可愛らしい美少女でしたが、中身は恐ろしい怪物だったようです。
そんな彼女の手には縄のような物が握られていて、それを俺の体に巻きつけると縛り上げ始めました。
必死に抵抗しようとしたものの、全く意味を為さずされるがままになってしまいました。
それから数時間後、俺は両手を縄で縛られたまま、床に転がされていました。
どうやら彼女は俺を殺そうとしているようでした。
そんな状況にも関わらず、何故か冷静に考えている自分がいることに驚きました。
それはおそらく彼女があまりにも可愛らしく美しいからでしょう。
そんな彼女を見ていると、このまま殺されてもいいかもしれないと思ってしまいました。
それに相手は、女の子なのでそこまで怖くはないとも思っていました。
でも、一つだけ心配なことがありました。
もし、彼女に正体を見破られてしまったらどうなるんだろうと考えると怖くて仕方ありません。
だって殺されるに決まっているのですから、それだけは絶対に避けたかったのです。
だから、彼女には、絶対に気づかれないようにしないといけないと思ったのですが……。
すると、突然頭の中に声が響いてきたのです。
(あら、そんなに怖がらなくてもいいのよ)
その声は紛れもなく目の前の少女の声だったのです。
しかも、口調からしてあきらかに女性の声でしたので驚いてしまって声が出なくなってしまいました。
その間にも彼女の話は続きます。
「ねぇ、あなたはどんな女の子がタイプかしら?」
そう言われて真っ先に思い浮かんだのがエリーゼさんでしたがさすがにそんなことは言えませんでした。
そこで適当にごまかすことに決めました。
「今は恋愛には興味がないかな」
そう言った後で後悔することになりました……。
なぜなら、その言葉を聞いた途端彼女の顔から笑みが消えたからです。
やばいと思い逃げようとしましたが手遅れでした、
俺はすかさず追撃を何とか躱すことができてほっと一息ついている暇もなく今度は魔法攻撃による攻撃を受けてしまい
大ピンチに陥ってしまうことになってしまったのです。