10話 雷穿In the lightning
死の森 エルリーフ
エルヴィナが空中から魔術で生成した矢を無数に放つ
ヴォルカがそれを炎で払い反撃する。
「どうした もう終わりか
仲間が来てるぞ」
ヴォルカが笑う。
エルリーフの男、数人が矢を放つ。
「だめ!!!
来ないで!」
エルヴィナが叫ぶと同時にヴォルカが全身に炎をまとう。
「かああああああああああっ!!!」
ヴォルカが四方に炎の塊を放つ。
「ぐわあああ」
炎はエルリーフの男を直撃し、全身を焼いていく。
「貴様ああああっ!!!」
エルヴィナが素手に豪風をまといヴォルカに殴りかかる。
「へ もらったぜ」
ヴォルカがエルヴィナの腕を掴み、
エルヴィナの腹部にヴォルカの拳が突き刺さる。
「かっ」
エルヴィナは勢いよく弾き飛ばされ木々の枝に絡まって止まる。
「もう終わりだな
けっ さっさと異世界人を出してりゃ こうはならなかったのにな。」
ドッとヴォルカが足の裏から炎を噴射し、飛び上がる。
エルヴィナに炎を纏ったヴォルカの拳が迫る。
「ごめん サトー」
「エルフの丸焼きだ!!!」
ドォォォォォォッ!!!!
「ぐがあああああああっ」
拳がエルヴィナに届く前に雷がヴォルカの全身を穿つ。
「エルリーフだ。」
俺は金剛杵を胸前に構える。
特別な力を何も持てなかった。
だがこの魔具<ガイスト>は特別だ。
(懐かしい 汝に我が雷を
敵に死をもたらす)
「あぁ 力を借りる。」
「誰だ 貴様ぁ!!!」
青い炎を纏い雷を防いだヴォルカが叫ぶ。
「俺があんたの探してる異世界人だ。」
「カハハハハ!!!そうか
燃やす きれいな炎の燃料になれ!」
ヴォルカが右腕に青い炎を収束させていく。
「灰も残さず燃え尽きろ!!!ブルームーン」
ヴォルカが収束させた三日月型の青い炎を俺めがけて放出する。
これが異世界人の力か、だが。
「ヴァジュラ」
「なっ 何だこの力は!!!」
俺の体を再構成している魔素<エレメント>を削りだして大量の雷を発生させる、
自爆技ならぬ自壊技だ。
金剛杵を持っていない左腕がすりばちで削られていくような痛みと共に消失していく。
「貴様 何をした!!」
「滅侭杵ってところか」
(よき、名だ)
俺は雷を纏った金剛杵を持ったままヴォルカの心臓めがけて突進する。
ヴォルカの体を粉々にちぎり飛ばす。
それと同時に俺の左腕が完全に消滅する。
「「「うぉおおおおおおお!!!!」」」
辺りから歓声が上がる。
ヴォルカの背後から来ていた燃えていた軍人達も全て鎮火し、倒れている。
「終わった か。」
俺の体が地面に倒れていた。
「大丈夫か」「サトー 息をして」
セリオとエルヴィナさんの声が聞こえる。
「良かった 守れた。」
全身から力が抜けていく。
「お おい!」
男の方を見ると、既に残骸すら残っていない。
「やったか」
そう言ったとたん、俺が飛び散らせたはずのヴォルカの肉体が炎をまとって再構成されていく。
そして炎が徐々に大きくなり
「炎の巨人っ!!!」
「いや」
炎の巨人が形を保てずぼろぼろと壊れていく。
「お前はボスには勝てん。」
炎の巨人が崩れていき
辺りの青い炎も消えていく。
「ボス か
ほかにも転生者がいるんだな。」
炎の巨人は完全に消え去り、操られていた軍人の死体だけが残っていた。