対話Dialogue with the Head
エルヴィナと呼ばれた女性に連れられ
牢獄になっていた洞窟から出る。
巨大な街が広がっている。
だが普通の街じゃない。
巨大な木々が整然と生えており、その全ての木々にツリーハウスが備え付けられている。
木々の間から朝日が少しだけ差している。
「すごいな こんな街があるのか。」
「ここは旧市街だから伝統的な街並みが残っている」
「あれは」
ひときわ巨大な木の幹の一番上あたりに祠のようなものが作られている。
「封印された魔具<ガイスト>よ」
「?」
ガイスト?何のことだ。
「こっち」
グイっと手錠についた縄を引っ張られついていく。
ツリーハウス街を抜けていくと普通のウッドハウスが立ち並ぶ場所に出た。
「あれよ」
エルヴィナが指さす方向を見ると1つだけ3階建てのウッドハウスがあった。
「いよいよか」
「余計なことは喋らないで」
「分かった。」
どうやらエルヴィナは俺の味方らしいな。
余計なことを喋るとまずいという警告か?
長は中立か敵対的だと見た方がいいだろう。
「長 入ります。」
「エルヴィナか 入りなさい。」
老齢の女性の声が聞こえ木の扉が自動で開いていく。
「これは自動ドアなのか」
「しっ」
エルヴィナが小声で囁き俺の手をつつく
「すいません」
中に入ると想像通りの全面が木材で出来た家だ。
木で出来た椅子に老齢の女性が腰かけている。
老齢の女性は占い師のようなゆったりとしたローブをまとっているが、
それ以上に何か圧倒的な力を感じる。
生活家具なんかも全部木材だが、ところどころ家電っぽいものがあるな。
コードが繋がっていないから家電なのかは分からないが。
「はは 珍しいかえ
異世界の少年よ。」
「はい 初めて見ました。」
「どれ よく顔を見せておくれ。」
俺はゆっくり手を開いて意思表示しつつ、老齢の女性に近づく。
「うむ。悪人ではないが、人でもないな。
生気<リーフ>がなく魔素<エレメント>のみで生命活動を行っておる。
南の伝承にある魔人のようだ。」
老齢の女性が俺の顔をじっと見つめ、両目2つずつの4つの瞳でぎょろぎょろと観察している。
「私は彼を客人として迎えようと思います。」
エルヴィナが長の対面にあった椅子に腰かける。
「ふふ 相変わらず知りたがり娘じゃの。
そんなに異世界が気になるか。」
「敵対的ではない異世界人は初めてですし、村にとって有益な情報を引き出せるかと。」
「確かにの。まぁお主の好みもあるかもしれんが。」
「「ぶっ」」 「ま まさかこんな年下に」
エルヴィナと俺がふきだす。
「いやお主はたぶん年下好きじゃろ。
村一番の我が息子のグランデオもあっさり振るし。
かと思えばその年までのらりくらりと。」
長はぶつぶつと小言を言い続けた。
「その節は失礼を。」
エルヴィナはそれ気まずそうに謝っている。
異世界人 エルリーフにも色恋ごとはあるんだな。
大変そうだ。
「まぁよいがの。だがその男はならんぞ。
生気<リーフ>がなければ子供は残せん。
異世界人の子孫がこの世界に定着しない訳じゃ。」
「お主も良いな?」
「はい ただこの街にしばらく滞在する許可をいただければ。」
俺は片膝をついて頭を下げる。
「うん 好きにするといいぞえ。
お主は礼儀正しくてよいの。
入用はエルヴィナにな。
話は終わりかえ?
そろそろ孫の顔を見にいく時間でな。」
「はい。ありがとうございます。」
窓から差す日差しを見ると日が高く昇っているらしい。
うまくいって良かったよ。
この後処刑とか言われたらどうしようもなかった。
異世界に来てからさんざんだったが、何とか生活はできそうだ。