バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

遺体遺棄

俺は登山経験があったが、雪山登山はしたことなかった。だが、どうしても確かめたかった。夏場、妻と妻の浮気相手の遺体を捨てた辺りで大きな雪崩が発生したと言うニュースを目にしたので、その雪崩のせいで、遺棄した遺体が見つかっていないかと気になって、雪のふりつもる雪山に登った。以前、雪山登山を計画して、装備を購入して直前で天候が悪化し、計画を中止して放置していた装備を使って、俺はその場所を目指した。俺の想定では二人の遺体が見つかっても、それは年越し後の雪解けの春以降で、遺体の損傷が激しく、運が良ければ遺体の身元さえ分からずに、殺人事件と立件されずに処理されるのではないかと思っていた。
だが、今の段階で雪崩で遺体がふもとまで流されて二人の遺体が発見されれば、きっと殺人事件だとばれるに違いない。
だから、俺は焦るようにひとり新雪の斜面を登っていた。
遺体を遺棄した夏場なら車で割と楽に頂上の近くまで辿りつけるのだが、降り積もった雪で山の地形は完全に変わり、徒歩でしか、遺棄現場には行けなくなっていた。途中、雪崩があったという場所を見たが、遺体が発見された様子はない。
俺はざっざっと雪を踏みしめながら、遺体を捨てたはずの場所を目指した。幸い、雪崩は、その辺りには影響を与えていないようで、目の前の真っ白な雪原のどこかに無事、遺体は埋もれているようであった。
だから、安堵した俺は、来た道を戻ろうとしたが、両足ががっしりと何かに捕まれて、バタンと新雪に倒れた。
「な?」
俺が倒れた次の瞬間、ドンという衝撃音がして、突如発生した雪崩に俺は巻き込まれた。
雪が完全に解けた頃、雪崩に巻き込まれた俺の遺体は発見されたが、俺の両足には、俺の妻と、その浮気相手の男が俺の足首を掴む様に発見された。

しおり