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雪が招く

その日の夜、平野部にも雪がふりつもり、玄関を開けると真っ白な世界が広がっていた。そうして、地面の新雪を踏みしめながら会社に向おうとして、ふと気が付いた。足跡だ、それも俺の家の周りをグルグルと一晩中歩き回ったような跡だった。うちの家の周りは普通の住宅街であり、うちの周りを誰かが通ってもおかしくはない。が、家の周りを周回した理由が分からない。犬の散歩でも他人の家の周りをぐるぐるするはずがない。
何となく気持ち悪いと思いながら出勤した。午後になり、再び雪が降り、家に
帰ると朝見た足跡は新しくふりつもった雪で見えなくなっていたのだが、翌朝、出勤しようと家を出ると今度は新雪に手形がついていた。クソ寒いのに誰かが、逆立ちして、家の周りをうろついたように無数の手形があった。
俺は怖くなり、一旦家の中に戻り、家の中にいた妻に外の手形のことを伝え、家の周りを不審者がうろついるようだから注意するように言った。妻は警察に連絡した方がいいかと俺に尋ねたが、近所の子供が新雪でイタズラしているだけかもしれないから、もう少し様子を見ようと妻と相談してからその日は会社に出かけた。夕方、家に帰ると、また雪が降って家の周りの手形は新雪に消えていた。
翌朝、足跡や手形はなく、新雪の上には黒い物体が転がっていた。それが生首だと気づいて、ヒッと後退ったら、俺の真後ろにいたその首から下にぶつかった。

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