第141話 予想外の『新型』の登場
『なんだと!新型?07式?聞いてないぞ!07式は東和共和国陸軍の虎の子のはずだぞ!こんなもんどこの誰の許可で遼帝国なんかに供与したんだ!』
通信機からかなめの声が響く。だが、誠はすでに法術非破壊兵器の発射体勢に入っていた。
『神前!』
かなめが叫ぶ。
『誠ちゃん!』
アメリアの悲鳴。
『神前』
カウラは言葉を飲み込んだ。
『間に合え!』
遊撃隊の撃退に成功したランは一気に機体を誠の目の前に立ちはだかる07式めがけて降下させていた。
誠の目の前で07式がサーベルを振り上げて向かってくるのが分かった。
だが、誠は操縦棹の先の法術兵器の起動ボタンを押すこと以外何もできなかった。
「行けー!」
誠の叫びと共に目の前の赤く光る空間を炎が飲み込むように周囲を真っ赤に染めた。進んでくる敵機も、足元の警備部の兵士達もすべてが赤く染まる。それだけではなかった。逆流するように誠の機体の後ろにも赤い炎は広がり、旧式のM5やM7の動きが引きつったように大きく跳ね上がった直後に力なく地面に墜ちて行った。
だが、目の前の07式は一瞬ひるんだだけで赤い炎の中を誠に向けて突き進んできている。07式には対法術兵器コックピットシェルが装備されているのは誠も知っていた。07式のサーベルが振り上げられ、誠はただ砲身を抱えたままでそれを受けるしかないように思った。
だが、不意にその07式がコントロールを失ったように足をもつれさせた。次の瞬間、コックピットの中から破裂するように装甲版がめくれあがり、そのまま誠の機体を避けるように倒れこんで動きを止めた。
『自爆か!事故?いや違うな。どこかに隠れてる法術師が炎熱系の法術で内部から撃破したのか?何者の仕業か?』
07式にたどり着いたかなめがつぶやいた。
誠は危機を脱したことなど無視してひたすら指定範囲に効力が発生するように機体のバランスを保った。そして地図上の効果範囲は次第に赤く染まり、それがすべてを多い尽くした時、次第に法術兵器の砲身はその赤いきれいな光を弱めて行った。
闇夜が赤く染まる。全周囲コックピットの大半を赤いやわらかい光が多い尽くした。
『これが……』
カウラはそれだけ言うと口を一文字にかみ締める。モニターの中のかなめもアメリアも驚いたように口を開けていた。