第135話 追随することが出来るようになった誠
「了解しました!では僕も続きます!」
そう言うと誠は反重力エンジンを利用した浮力により滑るように道路を南に進攻して行く。先ほどのような機動兵器の攻撃は無く、辺りはただ深夜の暗闇に包まれていた。
『さっきのがゲリラの最前線でそれを突破したってことか……後詰の予備部隊ぐらいは置いておかねえのかよ。レーダーに反応無しだ。つまらねえな。戦場の常識も知らずに内戦やってたのか……だからいつまでたっても決着がつかねえんだよ』
かなめの言葉にアメリアは急に不機嫌になる。
『そんなに敵が撃ちたいの?じゃあはげ山にでもレールガンぶっ放してればいいじゃないの。ああ、実際には撃たないでね。無駄弾撃たれると後で敵に少しは頭の回る指揮官が居て予備戦力でも確保していた時に困るから』
アメリアとしては敵に予備戦力が無かったことは喜ぶべきことであって、かなめの言うことは事態を悪化させるだけだと言いたいらしいと誠も分かった。
『こちらは何とかめどは立ったが……しかし撃墜せずにお帰り頂くってーのは面倒だな』
上空で停戦監視の西モスレム軍と揉めていた心強いランの言葉に誠は安心していた。西モスレム軍との接触が最小限で済んだことは作戦終了時の始末書の数と直結することが頭に浮かんでいただけに大きなため息が自然と漏れた。
『まあちび姐御も役に立つんだな。礼は言わねえからな。アレはアタシが喰うべきだった。こんな機動兵器の操縦に慣れないゲリラ相手よりよっぽど西モスレムの正規軍相手の戦闘の方がよっぽど歯ごたえがある』
銃を撃てないフラストレーションがかなめにそんな言葉を吐かせた。
『でけー口叩くじゃねえか!これからだって敵はうんざりするほどいるんだ。口に似合う仕事はしてくれよ。そうでなければ帰ってからちゃんと落とし前つけてもらうからな』
ランはかなめの言葉に向けて笑いながら叫ぶ。誠はレーダーをチェックする。このレーダーも法術系の技術が導入されていることは誠も聞かされていた。微弱な反応が続いているのは孤立しながら街道沿いの拠点を警備する政府軍部隊が展開していることを意味するが、彼らはシュツルム・パンツァーと戦える兵器を保有していないようでじっと動かずにいた。
『アタシ等が突出部のゲリラの中での精強部隊をつぶしたことで、ゲリラは援軍を送ってくるだろうな。反政府軍の援軍が先か、アタシ等の到着が先か。こりゃあ見ものだ』
かなめがいつもの不謹慎な笑みを浮かべていた。いつもかなめは最悪の事態を楽しんでいる。そのことが誠が戦場でのかなめに怖さを感じる理由の一つだった。
『範囲指定ビーコンの設置完了時刻はもう過ぎている。もうそろそろ東和陸軍の先遣部隊から05式広域鎮圧砲の威力設定範囲からの脱出を告げる通信が入るはずだがな』
カウラの言葉にかなめが表情を緩める。
『なんだ、まったく……訳も分からない新兵器の訳も分からないビーコンの設置……面倒なこと押し付けられて……ご愁傷様』
かなめも同じ特殊部隊上がりだけあって東和陸軍が指示されたビーコン設置作業がかなりの困難を伴うものであったことを察して同情するようにそう言った。
『それも彼等のお仕事よ。今回は誠ちゃんの使用する法術兵器の範囲指定ビーコンが頼りなんだから……一時間前に全ビーコンの設置が終了したって話よ。さすがランちゃんの口利きのおかげね。それに脱出が間に合わなくても今回の兵器は殺傷能力ゼロだもの。二日くらい意識が戻らないだけで人が死ぬわけじゃ無いわ』
アメリアの言葉に納得したと言うようにかなめは頷いた。
「でも敵の主力が集まってる地点なんてどうやって割り出したんですか?……反政府軍の機動兵器の所有が判明したのは三日前……!」
誠は自分で言いながら気がついた。反政府軍が機動兵器を所有するに至った経緯もその侵攻作戦でどの侵攻ルートが使用されるかも、そして政府軍がどこで反政府勢力を迎え撃つかもすべて分かった上で嵯峨は甲武へ旅立ったと言うこと。
「あの『駄目人間』最初から僕を
人の悪さには定評がある嵯峨を信じていた自分が馬鹿だったことを誠はここで改めて知ることになった。