第123話 ちっちゃい姐御の援軍
かなめの視線はレーダー機器を見つめていた。そこには緊張した面持ちがあった。
「北から追いかけてくる機影があるな。……二機か。この鈍足の輸送機、狙われたらひとたまりもねえぞ」
彼女とリンクしている東和軍とこの輸送機のレーダーからの情報がかなめにそんな言葉を吐かせた。
「東和陸軍の識別信号は確認してるわよ。出撃前にランちゃんの言ってた『信頼できる護衛』の方々じゃないの? 」
アメリアはそう言うとモニターの前にあるキーボードを叩いて機影のデータの検索にかかった。
『クラウゼ少佐!東和陸軍のシュツルム・パンツァーから通信です!』
菰田の声に続いて、モニターの中に小さなウィンドウが開いた。
ヘルメットをしたランが映し出される。同時に機影のデータから東和の現用シュツルム・パンツァーである89式二機が接近していることが表示される。
『よう!守護天使の到着!……ってアタシはまだ基地にいるけどな。先導の機体をターミナルにして通信してるんだ』
明るくランが叫ぶ。その声を聞きながらようやく制服をきちんと着ることができたパーラがカウラが立ち上がるのにあわせて自分の席についた。
「ランちゃんありがとうね!……って基地からどうやってここまで来るんですか?」
アメリアは支援に感謝しつつも、なぜランの出動だけ遅れているのか疑問に思っていた。
『おい、クラウゼ。鈍足って言うんなら機動性ゼロの05式もそうじゃねーか。法術師に『距離』の概念はねーんだよ。アタシの部下二人が戦闘状態に入って位置が特定出来たらそこまで跳ぶから。それに一応アタシは副隊長なんだ。ちゃん付けは止めろ。しめしがつかねーだろ?』
愚痴るようにそう言うランの顔を見てアメリアはにやにや笑っている。さらに音声でランの部下の89式のパイロットが低い声で笑いをこらえているのが分かる。
『これがアタシの教導部隊最後の仕事になりそーだわ。とりあえずアタシが先導するから作戦時間の管理はテメーがやれ』
ヘルメットの中で頬を膨らませるランを笑いながらアメリアはうなづいた。
「時計合わせは一時間後で。進入経路は……予定通りカルデラ山脈の始まるベルギ共和国の北端のキーラク湾から」
なんとか着替えを済ませて飛び出してきたパーラが慌ただしくキーボードを叩く。カウラはその姿を確認した後、誠とかなめに向かって歩いてくる。
「出撃準備!」
凛としたカウラの一言にはじかれるようにして誠とかなめはパーラの居た仮眠室の隣の部屋にあるパイロットスーツの装備をするべく立ち上がった。