第122話 いつものようにキレるかなめ
「ペッタン胸や深夜ラジオ中毒患者とデートするよりよっぽど建設的だろ?それに、アタシがプレゼントなんて今時流行んねえよ。それにアタシはアタシなりの方法で神前を調教してやる。一流の女王様の縄と鞭による調教を味わえるんだ。感謝しろよ」
かなめは東都戦争と呼ばれたマフィアと各国政府の特務機関が東都の闇資金を奪い合う混乱状況の中で特務工作員としてその地域『東都租界』に派遣されていた過去を持っていた。その際、身分を偽るため、ある時は娼婦、ある時はSM嬢をしていたと言う過去があった。
「それに何?暴力馬鹿と一緒に町を歩いていたらそれこそ警察のご厄介になるのが落ちよ。それとも得意の寝技でも繰り出すとか?あと、誠ちゃんを調教するのはやめてよね。目覚めちゃった誠ちゃんを想像したくないから」
かなめの売り言葉にアメリアの買い言葉。いつもの展開にカウラはただくたびれたと言うようにパーラの席で伸びをしている。
その時、誠は突然背後に気配を感じて振り返った。
「ごめん!遅くなった!アメリア。状況は!」
そう叫んでコックピット下の仮眠室から出てきたパーラに誠は思わず顔を赤らめた。ラフに勤務服のライトグリーンのワイシャツを引っ掛けて作業ズボン、水色の髪の隙間からむき出しの肩の肌が透けて見える。
「パーラ。こいつがいること忘れてるだろ?」
アメリアとにらみ合うのをやめたかなめに言われてパーラは自分の姿を見た。胸の辺りまでしかボタンをしていないために誠からもその谷間がくっきりと見えた。そしてパーラの悲鳴。思わず視線を床に落して誠は言い訳を考える。
「なるほど、誠ちゃんはどじっ娘属性があるのね」
真顔でそう言うアメリアを見てカウラは何もいえずに急いでボタンをはめるパーラを見た。
「パーラ。ボタン一つづつずれてないか?」
「えっ……ホントだ」
そう言うとパーラはそのまま仮眠室の扉の向こうへと消えた。
「何がしたかったんだ?あいつ」
かなめはそう言うとゆっくりと体を起こす。誠がそちらに目をやると、かなめの顔には先ほど誠を励ました時のような笑顔は無かった。