第112話 後発部隊の侵攻予定
「カウラさん。本隊はどう動く予定ですか?」
誠の戸惑った言葉にカウラは静かに顔をあげた。整備班員達はこの『特殊な部隊』では歩兵戦力として戦場で戦う訓練を受けている。『近藤事件』の際も、『ビックブラザーの加護』を近藤側が知っていた場合を予想して、白兵戦等の用意は艦内で行われていた。
誠は敵がゲリラと言うことは誠が失敗した場合に備えて、彼等もまた戦場に向うことを考えた。そしてその為に『ヒーリング能力』と言う法術で被弾したあらゆる兵士を治癒してしまう『特殊な部隊』の医務室に常駐している看護師の神前ひよこ曹長も同行することだろうと予想していた。
「そちらは『ふさ』で出撃。海上に待機して様子見だ」
カウラはあっさりとそう言った。
「支援は……って間に合いませんよね。僕達の方がかなり早く着きそうですから」
この作戦が本当に誠達だけで行われるだろう事実を知って誠は恐怖を覚えた。
「心配するな。貴様は私が守る」
カウラははっきりとそう言った。
「それにだ。我々が失敗した時はカント殿の頭に『ふさ』の主砲でも突きつけて、ありもしない選挙で政権の延命を狙った独裁者の負の遺産を身をもって味わってもらう予定だ」
その言葉に誠は自分が失敗した時の保険が掛けられていると聞いて少し安心した。しかし、カウラの表情はそんな息を抜いた誠の顔を見ると厳しいものへと変わった。
「まあそうなったらどこかの星条旗を掲げた正義の味方気取りの兵隊が笑顔で全面攻撃なんてシナリオまで見えてくるがな。そうしたら我々の出撃はすべて無駄になる。たぶん貴様も米帝の標的となるか、彼等に捕まって実験動物になるか……」
ふざけたようなその言葉だが、誠もカウラの性格が分かってきていただけにその意味が理解できた。
誠がしくじった場合に待っているのは本格的な紛争。そして同盟機構は瓦解し、新たな秩序の建設を大義として掲げての遼州の大乱。
誠はそんな状況を想像して冷や汗が流れるのを感じていた。