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第43話 結成パーティー

 ヴィヴィの家の居間に、俺とフラムとヴィヴィは集結した。なぜヴィヴィの家かというと一番設備がちゃんとしていたからだ。ヴィヴィはすでにキッチンも作ってあり、簡単な料理なら作れるようになっている。
 キッチンではヴィヴィとフラムがそれぞれ調理をしている。

「えーっと、ここでチーズを入れればいいのかな……?」
「あれ? これがここで……うわっ!? ジャガイモが爆発しました!?」

 ぎこちない動きで調理するヴィヴィと、手元で食材を爆発させるフラム。
 香ばしい匂いと焦げ臭い匂いが同時に来たところで、玄関扉が開く音がした。

「ごめんごめん。遅くなったよ」

 両手にジュースの入った瓶を持ってアランが現れた。
 アランは真っすぐ俺の隣に来る。ちなみに椅子の数が足りないため、床に座って食べる形だ。

「へぇ、女子2人が料理してるんだ」
「本人たちの希望でな。そろそろ出来るかな」

 2人ほぼ同時に調理を終え、料理を持ってくる。
 ヴィヴィが持ってきたのはラザニアを入れるような長方形の厚底の皿。中には真っ黒な物体が詰まっている。微かにチーズのような色は見えるけど、なんだコレ。最低最悪の品質だ。
 一方フラムはわかりやすい。カレーだ。スパイスの効いた良い匂いがする。横には輪切りにされたパンも添えてある。

「……ヴィヴィさん、これは一体なに?」

 つい、アランが聞く。

「ラザニアだ。自信作だよ」

 ラザニア……これが? 俺が知ってるラザニアの色とは随分かけ離れている。
 見た目で判断するのはダメか。とりあえず一口分よそって、皿に乗せる。フラムとアランも同様にラザニア(?)を皿に乗せた。

 同時に口に運ぶ。

「どうかな?」

 苦い。酸っぱい。甘い。
 何だコレは……一言で言うなら、不快な味だ。
 意外だな。錬金術をあそこまで完璧にできるのだから、料理も上手いものだと思っていた。色はわからずとも、嗅覚でその辺りはカバーできると思っていた。

 料理において色は大切な要素だ。焼き加減などは色を見て判断することが多い。それがわからないのは致命的ってわけか。って、これはそれ以前の問題か。

 アランもフラムも苦い顔をしている。

 全員きっと頭の中で慰めの言葉を考えているのだろうが、口に広がる不快感のせいで思考が回らない。無言の間ができてしまった。
 ヴィヴィは俺たちの表情を見て、察したような顔をした。

「やっぱり不味かったか。匂いからして明らかに焦げてるもんね」

 必死に慰めの言葉を考えていた俺たちを嘲る様に、ヴィヴィは笑う。

「焦げてるってわかってるなら出すんじゃねぇ!」
「いやぁ、1%の美味しい可能性に賭けたくてね。どうも料理は苦手だ」

 コイツ、俺たちの反応見て楽しんでやがったな……!

「次はフラムさんのカレーだね」

 話を早々に切り替えるアラン。まだ顔は苦い。早く口直しを入れたいのだろう。

「じゃ、先に頂くよ」
「ど、どうぞ」

 アランはパンにカレーをつけ、口に突っ込んだ。

「むがっ!!」

 しかし、口に入れた瞬間、アランの顔が真っ赤に染まる。いつもの余裕満載の笑みが消える。

「み、水! 水~~~!!」

 アランがその場で苦しみ悶える。俺は水の入ったコップをアランに手渡す。
 アランは一気に水を飲み込んだ。

「か、辛い……!! フラムさん、一体なにを……!?」
「いやぁ、辛味は入れてないんですけどね。超甘口カレーを作ったはずです」
「あ、甘さは一切なかったよぉ……?」
「よくわからないのですが、ジブンが作る料理全部激辛になっちゃうんです。きっとマナの影響ですね」
「私の料理が変なのも、きっとマナの影響だね」
「なんでもかんでもマナのせいにするんじゃねぇ」
「仕方ない。まだ食材は余ってるよね? 僕が料理を作る」

 アランがキッチンに移動して料理を始めた。迷いのない手つきだ。アイツが作ったイノシシ丼も美味しかったし、まぁ任せておいて大丈夫だろう。
 待つこと数十分、アランの料理が運ばれてきた。鶏肉の串焼き、トマトサラダ、アクアパッツァ、フライドポテトの4品だ。どれも食うまでもなく美味しいとわかる。これに加えて、俺とフラムが買ってきたケーキが二つ。

 全員のコップにジュースが注がれ、パーティーの準備が整った。

「そんじゃ乾杯の挨拶を、我らが団長にお願いしようかね」

 そう言って俺はヴィヴィに目を向ける。
 ヴィヴィはコホンと咳払いし、

「みんなの尽力で無事、オーロラフルーツの種を造ることができ、ファクトリーを結成できました。これから先も大変なことがいっぱいあると思いますが……全員一丸となり、楽しんでいきましょう」

 ヴィヴィはコップを上げる。

「それでは、ファクトリーの結成を祝って――乾杯」
「「「かんぱーい!」」」

 全員でコップをぶつけ合い、祝杯をあげる。
 こうして俺の学園生活の序章は終わった。
 明日からは授業が始まり、本格的に学校というものが始まる。
 まだまだ俺の錬金術師物語は始まったばかりだ。

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