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第42話 間違いなくVtuber四天王は俺の高校にいる!

「……どういうことだ?」

 壁に手をつき、目の前の少女に聞く。

「今時壁ドンですか」

 そうクールフェイスで言うのは麗歌だ。
 視聴覚室の前、人気のないこの場所で俺は麗歌に詰めよる。

「嘘だろ? 6期生が全員同じ高校にいるって」

「本当ですよ」

「……綺鳴って他の高校にも通ってるのか?」

「そんなわけないでしょう。落ち着いてください」

 麗歌は指で俺を押しのけ、

「昨日の発表はすべて事実です。6期生は全員、同じ高校にいる」

「あ、ありえねぇだろ……! だって、だってそれはつまり――」

「……ええ。そういうことですよ」

 麗歌は多くを語らない。

「これ以上、私に言えることはありません。では」

 麗歌は呆れた風に階段を下りていった。

「そうか……事実なのか」

 俺も三号館から出て、廊下を歩く。

――変な感覚だ。

(……女子が全員Vチューバーに見える!!!!)

 ハクアたん、れっちゃん、ヒセキ店長、ぽよよん。すべての女子が一番近いところの6期生メンバーに見えてしまう。

 背が小さい女子はぽよよん。
 真面目そうな女子はハクアたん。
 奔放そうな女子はヒセキ店長。
 ツンデレそうな女子はれっちゃん。

 やばい……なんだこれ、緊張で背筋が伸びっぱなしだ。

「兎神くん! 昨日の発表聞いた?」

 ウキウキと、朝っぱらからわざわざ俺の席に来て日比人は聞いてくる。

「6期生が全員同じ高校に居るなんて驚きだよね。同じ高校の人が羨ましいよ。幸せ者だね~」

 自覚がないだけでお前が幸せ者なんだよ!

「どうしたの兎神くん、元気ないね」

「……わりぃ、ちょっと外の空気吸ってくるわ」

「あ、うん。どうぞ」

 俺は屋上に出て、学校を上から見下ろす。

「……整理しよう」

 月鐘かるな、朝影綺鳴は俺と同じ高校に居る。

「そんで」

 6期生は全員、綺鳴と同じ高校に居る。

「ってことはだ」

 6期生は……、

「Vチューバー四天王は間違いなく、俺の高校に居るってことかああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」

 夏の乾いた空気に、俺の全身全霊の叫び声が轟いた。

 月鐘かるな。
 天空ハクア。
 七絆ヒセキ。
 蛇遠れつ。
 未来ぽよよ。

 俺が全員と接触するのは……そう遠い話ではない。

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