第175話 面子もそろったことで
「じゃあ始めるか!」
それから誠とカウラは小夏に開店準備の手伝いをさせられた。店の雇いの調理人の源さんと仕込みをしていた春子が顔を出すころには『特殊な部隊』の面々は次々に顔を出した。
「本当にかなめちゃんのおごりなの?後でランちゃんのツケに足しといてなんて落ちは無しよ」
不審そうな表情を浮かべたアメリアが小夏から受け取ったビールを注ぎながらそう言った。
「金は下ろしてきた。ここはカード使えねえからな。アタシを誰だと思ってるんだ?こう見えても一応ブラックカードの五枚や六枚くらいは持ってるんだぜ」
自分用のラム酒をグラスに注いだかなめはそう言ってアメリアに反撃する。
「それにしても菰田君は来ないのね」
周りを見渡していたこの『特殊な部隊』ではレアな常識人であるパーラは今日の掃除業務の中心人物である菰田が居ないことを気遣っていた。
「パーラ。菰田の話はするな。酒がまずくなる。アイツは酒が飲めないし鶏肉が食えないからな……ヒンヌー教では鶏肉はご禁制なのかな?なあカウラ」
菰田の事は元々嫌いなかなめがふざけてそう言った。
「私に聞くな。迷惑しているのは私の方なんだ」
パーラとかなめとカウラの漫才が繰り広げられている間も次々と場にビールが配られて行く。
「それじゃあ!今日一日ご苦労さん!明日からはよろしく!」
そう言うとかなめはグラスを掲げた。
『カンパーイ』
店中に一同の大声が響いた。
「それにしてもパーラさん悪いですね、車に乗せてもらっちゃって。俺は酒飲んでもバイクぐらい運転できますよ」
島田はいつものように非合法のヤンキー発言をした。
「島田君!警察官が飲酒運転してどうするのよ!全く島田君には順法精神と言うものが無いのかしら……だからうちはいつまで経っても『特殊な部隊』扱いなのよ」
島田の暴言にパーラは心底呆れたような表情を浮かべる。
「じゃあ、焼鳥盛り合わせができたから!順番に回していってね」
焼きあがった焼鳥盛り合わせを春子がアメリアに手渡す。アメリアは振り向いてテーブル席の技術部の男子隊員にそれを手渡す。
手慣れたその手並みに感心しながら誠も気分を良くしてビールを飲んだ。