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第159話 技術部部長代理でも気づかないこと

「おっかしいなあ、漏れてるわけじゃないんだけど」 

 島田の作業の結果拡げられた新聞紙の上の部品をカウラは一つ一つ手にとって眺めている。

「どうしたんですか?島田先輩」 

「神前か。実は冷却剤が漏れてるみたいなんだけど。さて、どうしたもんかね」 

 島田は頭を掻いて困った表情浮かべる。

「補充用の冷却剤の缶ってこれですか?」 

 誠は足元の缶を眺める。それがすぐになんであるかわかった。

「島田。これが原因なら間違いなく入らないだろうな」 

 カウラもそれを見て人工的な笑いを浮かべる。

「これエアソフトガン用のガスですよ」 

 缶を島田の目からも見えるような位置に誠は掲げた。

「おいホントかよ!吉野か上島の馬鹿、あれほどエアコンのガスかっぱらうなって言ったのに……ガスガンの違法改造は警察にパクられんぞ……って俺達警察官だったな」 

 島田はそのまま踏み台から降りた。

「これじゃあ買出し行かないと無理っすね。ベルガー大尉、すいませんが明日の朝には都合つけますから」 

 そう言って島田はばらしたクーラーの組み立てにかかる。

「神前。西園寺さんには午後になるって言っといてくれよ」 

 島田は器用に全面のカバーを組み込んで、手にしたボルトを刺していく。

「手伝わなくても大丈夫ですか?」 

「技術屋を舐めるなよ」

 そう言うと島田はてきぱきと修理のために外していた基盤をクーラーに差し込んでいく。 

「誠。まだ西園寺の部屋は終わらないのか?」 

 島田にねじを渡しながらカウラが誠に向き直る。

「今、アメリアさんが手伝ってますからすぐ終わると思うんですけど……」 

「あいつまたサボってタバコでも吸っているのか」 

 カウラはあきれたような顔をして、小さな基盤を島田に手渡す。

「じゃあ戻ります」 

 作業の邪魔にはなるまいと、誠はそのままカウラの部屋を出た。


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