第154話 新居の掃除開始
「それじゃあ行くか」
カウラと誠も立ち上がった。ようやく決心がついたとでも言うように、菰田とヒンヌー教徒も誠を白い目で見ながらその後に続く。
「菰田達!バケツと雑巾もう少し物置にあるはずだから持ってきてくれ」
食べ終わった弁当容器を片付けながら島田が叫んだ。仕方が無いという表情で菰田達ヒンヌー教団達が物置へ歩き始める。
「ほんじゃあ行くぞー」
投げやりにそう言うとかなめは歩き出した。アメリア、カウラもその後に続く。誠も仕方なく通路に出た。当番の隊員はすでに寮を出た後で、人気の無い階段を上り続ける。
「しかし、ずいぶん使いかけの洗剤があるのね」
掃除用具を取りに行った整備班員が持っている洗剤の瓶を入れたバケツにアメリアが目をやった。
「ああ、これはいつも島田先輩が掃除と言うと洗剤を買ってこさせるから……毎回掃除のたびにあまりが貯まっていってしまうんですよ」
誠は仕方がないというように理由を説明した。
「ああ、あいつ。そう言うところはいい加減だもんな。機械となるとあんなに几帳面なのにそれ以外はまるで……ああ、アイツは犯罪者だったな。じゃあ仕方がねえ」
かなめは窓から外を眺めながらつぶやいた。マンションが立ち並んでいることもあり、ビルの壁くらいしか見ることが出来ない。とりあえず彼らは西館一階の目的地へとたどり着いた。奥の部屋にカウラが、その隣の部屋にアメリアが、そして一番手前の部屋にかなめが入った。
「なんやかんや言いながらあの三人。気があってるんじゃないの?」
ポツリとパーラがつぶやく。その言葉はいつものようにかなめ、アメリア、カウラに無視され、誠だけが聞いていて苦笑いを浮かべた。
「パーラさん。ベルガー大尉を手伝ってくんねえかな。俺はクラウゼ少佐の手伝いをするから。よろしく頼みますよ」
そう言うと島田は真ん中のアメリアの部屋に入ろうとした。
「私はどうせ手伝ってくれるなら誠ちゃんの方が良いなあ」
入り口から顔を出すアメリアをカウラとかなめがにらみつける。
「お前と誠を一緒にすると仕事しねえからな。アニメの話とか一日中してたら明日の引越しの手伝いしてやらねえぞ」
アメリアのさぼり癖はかなめも知っているのでそう言って脅しをかける。自分の持ち込もうとする荷物が誰かの手助けが必要なほど大量なことを自覚しているアメリアはここは素直にかなめの言うことに従うしかなかった。
「わかりました、がんばりまーす」
かなめに言われると、アメリアはやる気の感じさせない調子でそう言うとすごすごと引っ込んでいった。
「こっちこい。神前。テメエはアタシの部屋の掃除を手伝え」
誠は左腕を引っ張られて無理やりかなめの部屋に引きずり込まれた。誠にはいつも強引なかなめに逆らう度胸は無かった。