実証実験
「先生、おめでとうございます。死亡事件の起きた室内などの空間は冷たくなることが証明されました」
「うむ、私も殺されたかいがあるというものだ」
「先生の探究心には驚きました。殺されたのに、その死さえも自らの研究に役立てようとするとは」
「なに、ついでだよ。死に損というのは、面白くないからね」
「それで、肝心の先生を刺した犯人の顔は?」
「いや、背中からぐさりとだったから、後ろを振り返る余裕もなく、床に倒れてね」
「先生、もし、その刺したのがこの私だとしたら、祟りますか?」
「たとえ君が犯人でも、死者である私の声が聞こえ、私の考えを論文にまとめて世間に公表できるのは君だけだ。祟るわけなかろう。むしろ感謝しているよ。君のおかげで、私の理論の正しさを証明できたのだから」
「先生は、死んでも研究好きの冷たい人なんですね」