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第30話 買取屋さん

「ルーシー様。では、参りましょうか」

 翌朝。テレーズさんと共に街へ。
 この学園へ最初に来た時は、正門の前まで馬車で連れて来てもらったから、裏の森を除くと、学園から出るのは初めてだったりする。

「ルーシー様。こちらです」
「あ、テレーズさん。先に買取屋さんへ行って欲しいんですけど」
「心得ております。しかしながら、お持ちになられているのは小さなバッグが一つだけですが……あ、着きましたね。こちらが私も使った事のある買取屋です。きちんと適正価格で買い取ってくださいますので、そこはご安心くださいませ」
「ありがとう」

 テレーズさんに紹介してもらった買取屋さんの建物の扉を潜ると、薄暗いお店の中にカウンターと椅子があり、年配の男性が立っていた。

「いらっしゃい! ……ん? そっちのメイドさんは、何処かで会った事がないかい?」
「こ、こほん……店主よ。ウチのお嬢様が、買い取って貰いたい物があるのだ。宜しく頼む」
「ふむ……これはまた綺麗なお嬢さんだね。何を見せてくれるのかね?」

 オジサンが私を値踏みするように見て来たけど……正直、私もダニエルたちがくれた物の、ちゃんとした価値はわからないんだよね。
 とりあえず、出すしかないので、早速もらった物を倉庫魔法で取り出す。

「≪ストレージ≫」
「えぇっ!? ルーシー様!? 今、何処から取り出されました!?」
「いや、それも驚きだが、それより出した物がシャレにならん物だぞ!? これは、キングホワイトスネークの脱皮した皮だ! しかも、状態がめちゃくちゃ良い! お嬢ちゃん! これを金貨十枚で売ってくれないか!?」

 金貨十枚っていうと、どれくらいの価値なんだろう?
 ヒート・プレートは買えるのかな?
 そんな事を考えていると、

「き、金貨十枚っ!?」
「テレーズさん。これって少ないの? ヒート・プレートには足りない? まだ別のものあるから、そっちも出すね」
「お、お待ち下さい! 金貨十枚ですよ!? 私のお給料の半年分くらいなんですけどっ!」
「それだけたれば、ヒートプレートが買える?」
「えぇ、調理の時にお見せした簡易の持ち運び用ではなく、最上級のヒート・プレートが五つは買えますよっ!」

 テレーズさんが物凄く慌て始めた。
 ……金貨十枚で、テレーズさんの給料の半年分だという事は、二百万円くらい? それとも三百万円? まさか百万円って事はないよね?
 とりあえず、金貨一枚で十万円以上の価値があるというのは分かった。

「ヒート・プレートが買えるのなら、十分よね。じゃあ、この蛇の皮だけ買い取りを……」
「ま、待ってくれ! 今のホワイトスネーク級の物がまだあるっていう事なんだろ!? み、見るだけ見せてくれないか!?」
「はぁ……これですけど」
「ろ、ロック鳥の羽だと!? これはマジックアイテムの材料になるんだ。金貨五枚で買い取らせて欲しい!」
「あ、はい。構いませんよ」

 元はリンゴだったのが、あっという間に金貨に変わってしまった。

「ありがとうございました! また何かありましたら、是非宜しくお願いいます」

 一先ず、ヒート・プレートを変えるだけの資金を得たので、テレーズさんに次のお店へ案内してもらおうと思ったんだけど、待ったを掛けられる。

「ルーシー様。あのような高価な品をいただき、そのままという訳には参りません。何かお礼の品をご用意しなければ」

 あー、テレーズさんにはさっき買い取ってもらった物を、ローランドさんから貰った事にしているんだった。
 事実を説明する事も出来ないし……ど、どうしよっ!

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