殺し屋
「最初は、仕事じゃなく、個人的な復讐で始めた。けど、俺があまりにも手際よく、証拠も残さず、警察にも捕まらなかったから、俺は殺しのプロだって噂が口づてに広まって、殺し屋じゃないと否定しても、勝手に金を置いていって、どうしてもこいつが許せないから殺してくれって頼まれて、で、依頼主の話を聞いているうちに同情してね、あ、これは本物の悪党だ。いまのうちに殺さないと、ひどい目に会う人たちがたくさん出ると思ってね、で、次々と悪党を殺してくれって依頼が来るんで、俺が引き受けないと、その依頼主が、自分で実行しそうだから、代わりに俺がやってあげてるんだ」
「今の世の中、騙される方が悪いとか、だまし取られるだけの大金を持っている被害者の方が、誹謗中傷にさらされる世の中だ、煽り運転の結果、幼い子供を巻き込んで一家を事故に会わせても、ガソリンまいて数十人焼き殺しても、加害者がのうのうと生きている。それを理不尽だと思うのは間違っていないと思うけどね」
「いわば、正義の味方だよ。相手を自殺に追い込むような書き込みをしてもたいした罪にならないのが、現代だ。俺みたいなフリ-ランスが生まれるのは時代の必然だと思うぜ」
「で、誰に死んでほしいんだ。俺の噂を辿って来たということは、そういうことだろ?」