君が神だ
「神様、お願い、私の体を返して」
「返して? 神になりたいと望んだのは、君だったはずだ。神の身体に何か不満でも?」
「いえ、神の身体はとても素晴らしいです。素晴らしいから困るんです」
「素晴らしいのに、困る? どういう意味かね」
「世界のすべてが見えていると、人間の醜さに吐き気がして世界を滅ぼしたくなるので」
「滅ぼしたいなら、滅ぼせばいい。今は君が神だ」
「え? そんなあっさり、私が人類を滅ぼして、いいんですか?」
「構わないさ、君は神だからね」
「あの、もしかして、この私に人類を滅ぼしてもらうために入れ替わったんですか、私なら、きっと人類を滅亡させようとするだろうと思って」
「さすが私の見込んだ子だ、大正解。私一人の判断で人類を滅ぼすのは忍びないと思って、君に神を任せた。滅ぼしたいなら、好きにしろ、それが、神の重責ってやつだ」
「その重責を私に押し付けて、自由を謳歌中ですか」
「さて、君が人類滅亡を望めば、人間だった君の肉体を使っている、こちらもただではすまないと思うが? ま、心配しなくても神となった君は大丈夫だろうが」
「そう、ですか」
「さ、どうする? 今は、君が神だ」


