何もない
「昼と夜の間には、何もありませんよ。もしかして、本来出会えないはずの男女が出会える時間だとか映画みたいな妄想を信じちゃうタイプですか」
「会えないの?」
「会えません。残念ですが、誰かに会いたかったのですか」
「そういう運命の人がいて欲しかったなと思っても、いいでしょ」
「そうですね、思うだけならタダです。が、現実の死とは、夢なんてものはなくて、なにもなく終わるのが普通ですよ」
「身も蓋もないわね」
「すみません、なにせ、死神ですから、事務的に粛々と魂をあの世に送るだけです。いちいち、映画みたいな演出してられません」
「じゃ、あの世へ行く前に、この美しい夕日だけでも、ゆっくり見させてくれない」
「どうぞ、夜になるくらいまでなら、待ちますよ」
「どうも」