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第34話 初めて聞く『第二小隊』発足の話

「去年は機体も無い、機材も無い。することも無いって有様だったからな。それに今回の整備班の参加者が少ないのは第二小隊の噂が本当みたいだからな。その準備とか色々あんだろ?」 

 かなめがポツリとつぶやいた。

「第二小隊?」

 聞き慣れないかなめの言葉に誠はオウム返しでそうつぶやいた。 

「うちの運用艦『ふさ』は重巡洋艦だ。本来アサルト・モジュールを最大二十機積めるからな。他にも機体を積む余裕はある。まだ正式発表にならないのは第二小隊はパイロットの選抜は終わったが、同盟会議の決済がまだ下りないそうだ」 

 カウラは穏やかに答える。目の前ではバスの止める位置をめぐり西がもう少し寄せろと言い出して島田と揉め始めていた。

「そうなんですか?……でもなんで第二小隊の増設が出来ないんですか?『近藤事件』の時に間に合えば……僕は楽ができたのに。まあ確かに機動部隊の詰め所が四人しか隊員が居ない割に広すぎるから部隊拡張を前提としてあの部屋が詰め所になったというのは予想がつくんですが……」

 そんな誠の疑問だが、かなめもカウラも逆に不思議そうに誠を見つめてきた。 

「あんまり叔父貴に力が集まるのが面白くねえんだろうな、上の連中は。それに第二小隊の隊長は……予定ではあのかえでだからな。それに法術捜査局が来月立ち上げだ。その主席捜査官が嵯峨茜。叔父貴の一人娘だ」 

 そこまで言うとかなめは難しい表情を浮かべた。

「全部隊長の親戚ばかりですね。ほかに居ないんですか?法術師って」

 誠の間抜けな問いにかなめはあきれたような顔で話し始めた。

「あのなあ、叔父貴の評判。上では最悪なの。そんな使える人材うちに回ってくると思うか?法術の事を自由に話せる世の中が来たんだ。どこの実力組織も法術師は喉から手が出るほど欲しい。かえでは『問題行動』があるからうちに飛ばされてきて、茜は叔父貴の娘ってことでうちの管轄下の『法術特捜』に志願したんだ。まあ茜としても叔父貴の監視ができるんで一石二鳥って訳だ」

 かなめの説明の通り法術師が公になってから誠の古巣の東和宇宙軍では大規模な人事異動があったらしいことは噂では聞いていた。おそらくそれが法術師を中心とした人事だろうということは社会常識の無い誠にも容易に想像がついた。

「でもかえでさんの『問題行動』って何ですか?隊長の話だと、西園寺さんの妹さんは優秀な甲武海軍軍人だと聞いているんですが……」

 誠が自分の妹の事を知っていることに驚いてかなめは思わず銃に手をやるところだった。

「アタシから言わせる気か?言いたくねえ!アイツは見た目からしてイカレてる。第二小隊とやらが出来れば嫌でも顔を合わせるんだ。それまで忘れてろ」

 かなめは誠から見ても明らかに不機嫌になった。

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