第200話 動揺するサイボーグ
「隊長にお願いしたい事がありますれす!」
カウラはそう言うと急に背筋を伸ばし敬礼した。かなめとアメリアはいかにも嫌そうな顔でカウラの動向を見る。
「何?聞きたくねえけど、仕方ねえから聞いてやるよ」
完全にどうでもいいという表情の嵯峨がそう尋ねた。
「わらくし!カウラ・ベルガー大尉はなやんれいるのれあります!」
嵯峨の表情がさらにうんざりしたものに変わり、そのまま右手の端で鍋からクエの身を取り出して酒をあおった。
「悩んでるんだ……へー……」
薄情な嵯峨の言葉がカウラの言葉を翻訳する。
「何言い出すんだ!馬鹿!」
かなめが思わずカウラを止めようとするが、『駄目人間』とは言え人生の先輩の嵯峨はすばやくその機先を制する。
「そう。じゃあ隊長として聞かなければならねえな。続けていいよ」
話半分にシイタケをつまみに焼酎を飲みながら、嵯峨は話の先を促した。
「はいれす!わたひは!その!」
またカウラの足元がおぼつかなくなる。仕方なく支える誠。エメラルドグリーンの切れ長の目がとろんと誠を見つめている。
「何言いだすつもりだ?この酔っ払い!」
カウラから奪い取ったグラスにラム酒を注ぎながら、かなめはやけになって叫んだ。しかし、誠から離れたカウラの瞳がじっと自分を見つめている、自分の胸を見つめている事に気づくと、かなめはわざとその視線から逃れるように天井を見てだまって酒を口に含む。
「このド
かなめはカウラの突然の言葉に思わず酒を噴出す。そんなかなめを見ながら、アメリアはカウラの言葉に同調してうなづく。
「たぶらかすだと!なんでアタシがそんな事しなきゃならねえんだ?まあ、こいつが勝手に、その、なんだ、あのだな、ええと……」
「たぶらかしてるわね……支配して調教しているわね……銃で」
いつの間にかこのテーブルにやってきていたライトブルーのショートカットのパーラ・ラビロフ中尉がそう言った。
「確かに俺達には命令口調ばかりの西園寺中尉が神前が相手となると口調が少し柔らかくなるからな……うらやましいというかなんと言うか」
パーラの発言を聞いて鍋を見回ってきていた島田がそう言った。島田と一緒にやってきたサラも同意するように頷いている。
「テメエ等!なにふざけたこと抜かしてるんだ!無事に地面を踏めると思うなよ!この糞野郎!」
顔を真っ赤にしてかなめは激高して反論する。
「正人の言う通りよ」
「やっぱりさっきの発言、取り消せませんか?西園寺中尉」
あっさりとパーラの言葉を受け止めたサラと、かなめの殺気を野生の勘で察して逃げ腰の島田がそこにいた。