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思い出、演出

俺は、元々悪霊を成仏させる払い屋だったが、最近は霊を払うのとは逆に、霊を指定の場所に呼び寄せる仕事もやっていた。
それは夏の時期にぴったりな仕事で、依頼も多い。ま、出張お化け屋敷といったところだ。若い男女が、人気のない廃墟に行き、ちょっと怖い目に会い、女が男の腕にしがみつく、そんなシチュエーションを受動的に発生させるのだ。男が女性にかっこいいところを見せたくて依頼してくることよりも、意外に、女性が、自分自身で怖がりなふりをして男を頼るようにしがみつきたくて依頼してくることが最近は多い。
ヘタレな男性が多くて、女性の方が気を使って男を頼っていると思わせたいらしいのだ。で、俺の場合、本物の幽霊を使って脅かすので、お客様の受けはいい。
夏に本物の幽霊に驚かされたなんて、ひと夏の思い出として、これほど記憶に残るものはないだろう。だが、たまに、良くないものを引き寄せてしまうことがあるので、意外に神経を使う。だが、俺が不味いと思ったその邪悪なものをホラー映画みたいに二人だけの力で追い払い、その後、結婚した男女もいるので、B級ホラー映画の結末もかなりリアリティがあるんだなと最近は思っている。

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