第178話 宣戦布告
『近藤の旦那……』
ランは残忍な笑顔を浮かべて絶望する近藤にそう語り掛けた。
『さらに何を言おうと言うのですかな?異世界から来た超能力者相手に我々がどんな意地を見せるか知りたいとでも?』
今の近藤にはそう言うのが精いっぱいだった。確信していた勝利が戦う前からすでにその手から零れ落ちている事実は、作戦立案を担当していた近藤もよくわかっていた。
『敵はな……あんた等じゃねーんだ。アタシ等の敵はもっとでかい……そしてそいつ等も遼州人……『法術師』だ』
うなだれかける近藤に向けてランはそう告げた。そしてランの表情はそれまでの挑発的なモノから真剣な表情へと変わった。
『アタシ等、『特殊な部隊』は宣戦を布告する!相手は『廃帝ハド』って奴だ。宇宙に生きる『全存在』の『敵』だ!』

「『廃帝ハド』……何者ですか?」
ランの宣言に誠はついていけなかった。自分がただの『新人』で『幹部』のランとは格が違うことは分かっていた。真の目的を誠が知らないのは当然かもしれない。しかし、ランの言う『守るべき力無き人々』にも知識のある人がいるはずなのだから、『廃帝ハド』への具体的対策などを教えておいた方がいいことは誠にも分かった。
『神前』
誠は急に自分に言葉を向けてきたランに驚いて顔をこわばらせた。
『知らねーで済めばよかったんだ。世の中、知らねー方がいーことばっかりなんだ。知って得なことって……意外と少ねーぞ』
そんな『ランの優しい笑顔』が急に『処刑対象』に向かった。
『甲武国海軍中佐、近藤貴久。テメーをこれから処刑する。『死んでもらいます』ってか?』
誠は自分がこれから何をさせられるかと言うことと、この『宣戦布告』が何をもたらすのかを考えながら全天周囲モニターの全体に視線を走らせた。