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幽霊を見た

あの夏、子供だった俺は、帰省先の祖父母の古い家のそばで幽霊を見た。大人たちに真剣に目撃したそれを話したのだが、いくら田舎とはいえ、祖父母の家の近くにお寺や墓地はなくて、祖父母も両親も子供の見間違いとして幽霊を信じてはくれなかった。友達にも話したが、逆に怖がりとバカにされるだけで、誰も信じてはくれなかった。
だから、あの夏以来、俺はお盆に両親とあの家に帰省するたびに、あのひと夏の思い出の幽霊が本物だったと、証明するようにその家の周りを毎年探検した。祖父母も知らない、放置された墓石が近くにあるかもと幽霊の存在を証明する痕跡を毎年探した。
だが、幽霊の証拠を見つける前に、お盆が来る前のある梅雨の大雨の時、俺は交通事故に巻き込まれて死んだ。
で、その年の夏は、自分で幽霊を探すのをあきらめて、ガキの頃の思い出話を信じてくれなかった俺の彼女に幽霊となった俺を見てもらうことで、幽霊の存在を信じてもらおうとして、亡霊として、彼女の周りをうろついてみたが、幽霊の俺を見るどころか、俺は自分の彼女が、彼氏が死んだ直後に新しい男を作るのを目撃した。
どうやら、俺が生きている間に浮気していて、俺の事故死をこれ幸いと、そいつを彼氏に格上げしたようだ。俺は幽霊を見て信じてもらうという目的を忘れて、彼女を恨む怨霊となって、今は彼女の周りをうろついていた。

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