懺悔
夏が来ると思い出す、小学生の頃、塾に行くのが嫌で、塾が焼けてしまえばいいのにと思って、トイレに、こっそりと火のついた蝋燭を置いたが、その火は建物に広がらず、大騒ぎにもならず、誰が片付けたのか分からないが、トイレに焦げ跡だけが残っていた。いつか、放火未遂を問われるかもと思いつつ、誰にも言えないひと夏の思い出として、いまも記憶に残っている。が、大人になり、その塾の建物自体が、なくなっても、あのときの放火未遂を責める者は現れなくて、今も、自分は普通に生きている。ただ、もしあの時、自分のせいで塾が大火事になったら、放火魔として、自分の人生は大きく変わっていたと思うとなんてことをしようとしてたんだと、自分の行動に恐怖する。そして、未だに、あの時の蝋燭を誰が片付けたのか、俺は知らない。