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第153話 魚料理屋

 誠はここで周りの『特殊な部隊』の先輩達が『船盛(ふなもり)』や『盛り合わせ寿司』を食べていることに気づいた。いくら演習を前にしての前祝としてもその豪華さに誠は目を奪われた。

「豪勢な……さすがに……気合が入ってますね。この艦の料理って魚料理しか無いってことは無いですよね?」

 そう言ってみたものの、ランの前に並んだものを見て誠は自分が甘かったことに気づいた。

 
挿絵


 それは金目鯛の煮つけ、そして……。

「やっぱりここに来たら『キンメの煮つけ』と当然……これだ!注げ、神前!」

 ランはそう言って徳利にしか見えないものを誠に差し出す。

「アタシは三十四歳だからな!合法だ!オメーは上寿司がいーか?」

 そう言って『偉大なる中佐殿』は冷えた小さな日本酒用のグラスを差し出す。

 彼女の萌え萌えな表情と対照的なグラスを持つ慣れた手つきに、誠は引きつり笑いを浮かべた。

「僕は……並の寿司でいいです」

 たぶんこのまま演習の間は魚しか食べられないだろう。

 誠はそう思いながら、自分が魚好きだったことを母に感謝した。


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