第148話 馬鹿と気の合う馬鹿
「そこ!じゃま!島田君!」

誘導灯を手にコンテナ車を誘導していたヘルメットの女性士官、パーラ・ラビロフが振り向いた。
「神前はどうなんだよ!こいつも何もしてねえぞ」
島田とサラはそう叫んで逃げさった。
「積み込み作業をしてるのは島田君の部下の整備班の人達じゃないの。それに神前君はパイロットだからいいの!島田君は技術部の部長代理でしょ!サボってないで!まったく」
「パーラさん……お仕事大変ですね」
誠はそう言ってパーラをねぎらう。
「珍しく仕事が有るんだからこなさなきゃ。それより、神前君。島田君の相手、大変よね……あの人……馬鹿だから」
あっさりと島田をぶった斬るパーラに誠は苦笑いを浮かべた。
「でも悪い人じゃないですよ」
「犯罪者一歩手前でも悪い人じゃないの?」
「犯罪者一歩手前……確かに」
誠は先日の島田によるバイク窃盗事件を思い出して苦笑いを浮かべた。
「間違っても島田君の真似はしないでね……でも島田君と話が合うなんて……やっぱり神前君も『特殊』なのね。じゃあ、仕事に戻らないと」
そう言ってパーラは次のトレーラーの荷物の積み込みが始まったのを見て走り去った。
「犯罪者……一歩手前って……あの人ほとんど犯罪者ですけど……それと島田先輩と一緒にしないでくださいよ。僕は馬鹿じゃありません」
取り残された誠は呆然と立ち尽くしていた。
その目の前を次々とコンテナがフォークリフトに乗せられて運ばれていく。
「演習なんだ……『実戦』になるんだ……」
誠はこの馬鹿騒ぎを見て改めて自分が『特殊な部隊』の隊員だったことと誠を待っているであろう『戦場』を想像して身の毛がよだつのを感じていた。