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再会

「それにしても、あのようなことを、一体誰が……」

 村の入り口であっただろう門の一部をくぐり、私たちはもう一度街へ戻ろうと歩き出す。

「うーん。まぁ、いいんじゃね? 綺麗に使っててくれるなら、それはそれで。俺が使うよりも良いよ」

「気にならないのか?」

「なるよ。なるけど、あそこはもう俺の帰る場所じゃない。俺はここから逃げ出して、今日まで戻れなかったんだ。自分の身が可愛くて、危ないことが待ってるかもしれないからって逃げた」

「それは……」

「うん。仕方ないことかもしれない。でも、今あの家に出入りしてるやつは、危ない目に遭ってでも、あの家を使ってるのかもしれない。それなら、そいつに譲るよ」

「ルーイが、それで良いのなら」

「あぁ。戻ろうぜ。情報、集めないとな」

 村を出て、まだそれほど進む前に、誰かがこちらへ走ってくるのが見えた。

「犬だ!」

 走ってきた人物が、私たちにそう声をかける。走ってきた者は真っ直ぐにサポナ村へと飛び込んで行った。

「犬?」

「あ、あれだ」

 一頭の犬がこちらへ向かって走ってくるのが見える。先程の人物、何をしたんだ?

「ルーイ……は逃げたか」

 隠れるように声をかけると、既にルーイの姿はない。わかってはいたが、相変わらず早い。ククッ。私は喉の奥で笑いを堪えると、犬を前に剣を構える。大した相手ではなさそうだ。
 勢いよく走ってきた犬は私の前で速度を落とす。私としばらく睨み合っていた犬は、そのうちに後ろを向いて駆けて行った。逃げてくれたか。不必要に殺したくもない。それで良い。

「終わった?」

 いつもと同じように、どこからともなくルーイが顔を出す。

「あぁ。逃げていった」

「さっきのやつは……村の中だよな?」

「真っ直ぐ走って行った。中を知っているのかもしれない」

「まさか」

 ルーイの生家に住んでいる本人かもしれない。街に戻る時間が多少遅くなったとしても、ここは確認せずにはいられない。

「行くぞ」

「えー? 行くの?」

「行かないつもりか? あの者が、ルーイの生家に住んでる張本人かもしれない」

「そうかもしれないけどさ。会いたくないなぁ」
 
 珍しく躊躇うルーイを残して、私は再びサポナ村の中へと足を踏み入れる。

「ちょっ、置いていくなって」

 ルーイが私の後を追いかけてくるのがわかる。後ろの足音を意識しつつ、私は周囲を見渡しながら先へ進んでいく。
 ありがたいことに、壊された建物は人が隠れることもままならない。人気のない建物が立ち並ぶ道をどんどん進んでいく。目指すのはルーイの生家だ。
 念のためにといくつかの建物は中まで確認をしながら進んできた。そして先程までと同じように、他の建物に比べて明らかに綺麗な状態で佇む生家を目の前にする。
 先程とどこも変わりはない気がする。もしかしたらあの人物は村を通り道に使っただけかもしれない。それならば、それで構わない。ただ、確認せずにはいられない。これは騎士の性か、それとも私の興味か。

「開けるぞ」

「うーん。誰もいねぇと思うよ」

「それならすぐに帰れば良い」

「……わかったよ」

 一応ルーイの了承を得て、私は先程のように剣を構え、少し大袈裟に扉を開けた。そして、中に足を踏み入れる。
 ブンッ! 私が一歩足を踏み入れた瞬間だった。頭の上から、何かが振り下ろされた。咄嗟に構えていた剣で振り下ろされたものをなぎ払う。
 そして、私に危害を加えようとした人物の首元へ剣を当てがい、その人物の顔を確かめた。

「其方!」

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