バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

307 交易品納品所にて

 メロの国内の、随所に設けられてある、交易品の納品所へと向かう。

 納品所は、受付用のカウンターと、手前に交易品を置くための木造の台が置かれているだけの、簡易的な造りをしていた。

 大通りにある納品所は、市場の中にある。

 「ちょっと!どいて、どいて!」

 溢れかえった人混みを、ライラが掻き分けながら、フィオナ商隊は納品所へ。

 「やあ!お帰り!」

 納品所には、隊長のフェンやオルハンをはじめとした、キャラバンサロンのみんなが駆けつけていた。

 「人はけ、しといたよ」
 「フェ~ン!ありがと!」
 「おい!前に俺が同行した時より多いぞ!」
 「ウテナの人気が日に日に増してるのよ、オルハン」

 ラクダから交易品である皿や椀などの食器をおろして、それをどんどん、納品所へ。

 「よろしくです!」

 ウテナが笑顔で、納品所の受付の男に言った。

 「……」

 ――パン、パン。

 受付の男は無言で、ウテナに合唱してお辞儀をすると、その両手を叩いた。

 ――ザッ。

 「んっ」

 フィオナ商隊が納品を終えたところへ、護衛が数人、ウテナ、フィオナ、ライラ3人の前に立った。

 「交易、お疲れさまでございました」

 律儀そうな風貌をした護衛の一人が、3人に労いの言葉をかけつつ、言った。

 「すでに何度か経験なさっているかもしれませんが……」
 「分かっています」

 護衛の言葉を、ウテナは途中で遮った。フィオナとライラを見る。2人も、うなずいていた。

 そして、左手を、差し出す。

 「よろしくお願いします」
 「……」

 護衛は合唱すると、細い針を取り出した。

 その針をウテナの、左腕へ。

 ――チクッ。

 針が、ウテナの左腕に刺さる。

 刺さったところから、一滴ほどの、血がにじんだ。

 同じく、フィオナとライラにも、護衛によって針が刺される。

 「……大丈夫です」
 「ねえ。これ、毎回やんなきゃ、いけないの?」

 ライラが若干、機嫌悪めに、護衛に言った。

 「……」

 護衛は、黙っている。

 「仕方ないよ」

 フェンが、少し空気が悪くなったのを察して、ライラへと言った。

 「護衛の人たちだって、やりたくてやってる訳じゃない」
 「……いやまあ、別に決まりなら、いいんだけど」
 「……」

 数人の護衛は合掌して一礼すると、納品所の奥へと下がっていった。

 血の確認。

 ここ最近になって、交易から戻ってきたキャラバンや、国の外回りをした護衛達には、血の確認が強制的に行われていた。

 「なんかさ~」
 「おい、ライラ。グチグチ言ってんじゃねえよ」
 「でもさ、でもさ!」

 納品を終えた後、ウテナを中心に、たくさんの人に囲まれながら歩いている中、ライラとオルハンが話していた。

 「毎回、毎回、チクチクやられるの、正直、イヤなんだけど!」
 「決まりなんだから、仕方ねえだろ」
 「はぁ!?アンタいつも破天荒なのに、なんで、こういう事には従順なのよ!?」
 「なんでって、……なんでだろ?」
 「それにさ、それにさ!女ってやっぱりお肌が……!」

 ライラは血の確認が不服であることを、しばらくの間、オルハンにぶつけていた。

しおり