面会時間
「あと、5分で、面会時間は、終わりです。」
「あと、5分。あなた、ここよ、わたしはここよ」
必死で呼びかけるが、死者の声は生者には届かない。面会とは言っても、こちらから、一方的に話しかけるだけだった。相手に霊感があれば、会話もできるそうだが、うちの夫は、私の好意に気づくのにずいぶんかかった鈍感野郎だったので、霊感みたいな、繊細なものは期待できそうになかった。
「ん、誰に見られてるような・・・」
「誰もいないよ、お父さん。お母さんが見守ってくれてたりして」
「おいおい、そういうオカルト母さん大嫌いだったろ」
「そうね、あんなに幽霊とか苦手なお母さんが、幽霊になって出て来るわけないか」
「ま、父さんは幽霊でも会いたいが」
「あなた、ここよ、わたしはここよ」
お墓の前で手を合わせる夫と娘に必死で話しかけるが、5分はあっという間に過ぎてしまった。