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先生もうすぐ死ぬ

「先生、もうすぐ死ぬみたいだから、最期にみんなとかくれんぼして遊びましょう」
「授業は? 校長先生に怒られない?」
「いいのよ、もうすぐ死ぬのに、怒られることを気にしてもしょうがないでしょ。さ、みんな隠れて隠れて・・・」
「先生、本当にいいの?」
「なに? 先生の最期のお願い聞いてくれないの? そんなにみんな、勉強が好きだった?」
「かくれんぼって、この教室の中だけ?」
「もちろん、教室の外に出てもいいわよ、教室だけだと狭いでしょ。それと他の先生に見つからないように静かにね。他の教室は、授業中だから。さ、早く隠れなさい。先生とかくれんぼしたくなくて、勉強がしたいって子には、先生がたくさん宿題を出してあげる。さ、勉強が嫌いで、宿題を出してほしくない子は、一生懸命隠れなさい」
僕は勉強も宿題も嫌いなので、真っ先に教室を飛び出して、隠れた。授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、下校時刻になっても、先生は探しに来なかった。先生は教室で、子供たちを探しに行こうとした直後に倒れて死んでいた。当然、大騒ぎになったが、大人は子どもたちに先生の死因も、どうして先生が自分が死ぬことを事前に知ったのか、教えてくれなかった。

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