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第2章4話 大統領登場 ソフィアの『ギフト』

悠たちが大臣にデモの真実を聞き出そうとしているとき、とある人物が執務室にやってきた。

 「なにやら、盛り上がってるな。」

 「あなたは!」

大臣が驚いた様子で声を上げ椅子から立ち上がり、悠たちは扉のほうに目を向けた。そこには、スキンヘッドで左目に大きな切り傷、右首から肩にかけて大きな火傷痕がある2m近くの大男が立っていた。

 「久しぶりだな悠坊。元気にやってるか。」

 「お久しぶりです。ルーカス大統領。はい、元気でやってますよ。」

現れたのは南部の現大統領のルーカス・ムーア。前第4師団の師団長で現第4師団の師団長、ソフィアの戦闘の師匠にあたる人物だ。約2年前まで現役で師団長を務めていたが、夜中のパトロール中に謎の魔物による強襲で右腕の肘から下と左目を失い、さらには右半身が毒物によるやけどを負う重傷を負ったため引退を余儀なくなれた。

 「お師匠、お久しぶりです。」

 「おう、ソフィア。ちゃんと修行してるか。」

 「もちろんです。日々怠らず研鑽を積んでいます。」

 「おうそうかそうか。ガハハハッ。」

ルーカス大統領は大笑いしながらソフィアの頭をポンポンとなでた。

 「大統領、どうしてこのようなところに。」

スタークが話を切り出した。

 「ん?あぁ、悠坊が南部に来ているって報告を受けたから会いにな。それと、デモ活動のことも気になってたからな。」

 「まぁ、やっとこさ仕事を終わらせて止めるために行ったらデモは終わってたんだけどな。市民を守ってくれたんだってな、ありがとな悠坊。」

ルーカス大統領は悠の頭を撫でた。悠は少し恥ずかしそうに

 「いえ、市民の皆様を守るのは当然なことなので。」

 「それはそうと、大臣。お前デモが起きるように市民の人たちを煽ったそうじゃないか。どう落とし前付ける気だ?」

 「いえ、決してそのようなことは。」

大臣は冷や汗をかきながら話そうとした時

 「じゃあ市民が俺に嘘を言ったってことか?」

 「すみません。」

大臣はルーカス大統領の気迫に負けてすべてを自白した。

 「まったく。そんな子供じみた理由でしょうもないこと市民の人たちにさせるな。今は四門について対策しないといけないというのにこんなことで悠に迷惑かけおってからに。」

 「お前の処分はおいおい話すから待っとけよ。」

 「はい。」

大臣はルーカス大統領の圧に屈し腰を抜かしてその場にへたり込んだ。

 「迷惑かけてすまなかったな。後はこっちで対処するから。」

 「はい、ありがとうございます。」

 「にしても、総司令殿はさぞお怒りだっただろうな。一度謝罪に行かなきゃな。」

 「いえ、千代さんにはこちらから事情を話をしておきますからご心配なく。」

 「そういうわけにもいかないんだよ。」

ルーカス大統領は何かを思い出したかのように暗い顔をして

 「総司令殿は悠坊のことに関してはこの上なく厳しいからな。あの人を敵に回したくないし、いい関係を続けたから機嫌を損ねたままにしておくわけには・・・総司令殿に謝罪に行くことと日時は改めて連絡するって言っておいてくれ。」

 「?わかりました。」

悠たちは大臣の処遇を大統領に任せ大使館を後にした。

 「とりあえず、解決してよかったな悠。」

 「そうだなスターク。とりあえず一件落着だな。」

何とかデモの問題が解決した束の間、再び警報が鳴り響いた。

 「またか、彩音。場所は?」

 「はい、ここから第3の基地の方向に15キロ地点ですね。かなり大きい霧が発生しています。予想出現体数も50は超えているかと。」

 「結構多いな。周辺にカメラってある?あと地図も。」

 「ありますよ。今見せますね。」

彩音は持ってきていたタブレットで魔物出現地点の映像と周辺の地図の画像を悠に見せた。

 「あ~その辺ね。スターク。この辺まで全力ダッシュでどのくらいかかる?」

 「その辺なら10分もかからないくらいだな。」

 「10分か。それなら直接行くより撃った方が速いな。あのあたりで壊したらいけないものとかある?」

 「いや、あのあたりは人も住んでないし建物のダミーだから壊しても問題ないぞ。」

 「わかった。彩音。魔物の数を教えてくれ。」

 「はい。獣型30、人型と人獣型が共に20ずつです。」

 「了解。ソフィア。」

 「?なに?」

 「小型爆弾を作ってもらっていいか?魔物の数ちょっとプラスαくらい。」

 「いいよ~。ちょっと待ってね。」

ソフィアが地面に手を触れると、1分もたたずにピンポン玉サイズの小型爆弾を80個近く生成した。
第4師団長ソフィア・スミスの『ギフト』は|【錬金術師】《アルケミスト》。ソフィアが触れた物質を別の物質へと変換や分解。触れた物質を変形させて武器を創造することができる『ギフト』。ただし、質量は同じ物しか作れず、未知の物質を作り出すことはできない。さらに、『ギフト』を使用しすぎると脳への負担が大きくなり最悪脳の血管が焼き切れてしまう。

 「はい。できたわよ。これの位あればいい?」

 「うん、ありがとう。おいで『業魔』」

悠は指輪から業魔を呼び出してソフィアが作り出した爆弾を全て矢に変えた。

 『万生流星群《ばんせいりゅうせいぐん》』

悠が放った矢は魔物に直撃する直前、爆弾に戻り魔物の体に当たった瞬間に爆発しものの数秒で70体いた魔物が全て爆散した。

 「ふぅ~これだけ爆散したらさっきみたいに合体はしないだろう。」

 「師団長お疲れ様です。生体反応が消滅しました。先程のように合体する恐れはないかと。」

 「わかった。終わったよ2人とも。」

 「おぅお疲れ。」

 「お疲れ様。」

 「この後どうする?一回第3基地に戻るか?」

 「そうだな、ソフィアはどうする?自分の基地に戻るか?」

 「そちらに一回お邪魔するわ。久しぶりに悠と稽古したいし。」

 「わかった。じゃあ戻るか。」

3人は第3の基地へと戻っていった。基地に帰り着くころには日の暮れていて悠たちは第3・第4の師団員と夕食をとった後、ソフィア、スタークと稽古をすることになった。

 「スターク、ソフィア。ルールはどうする?」

 「『ギフト』ありで一本取ったほうの勝ちっていうのはどうだ?」

 「私はそれでいいわよ。」

 「わかったそれでいこう。」

 「師団員が見学するけどいいよな。」

 「いいぞ。1人ずつか?」

 「あぁ。とりあえずな。」

 「了解。どっちから来る?」

 「私から行くわ。」

ソフィアは前に出て、見学している師団員に

 「あなた達よく見てなさい。今から見るのは師団最強の男の戦いよ。」

ソフィアは地面から剣を作り出し構えた。

 「ソフィア~。どの武器で相手してほしいとかある?」

 「そうね。スピード勝負したいし『姫』でお願い。」

 「了解。おいで『姫』」

悠は指輪から2本の小太刀を出した。

 「ソフィア、準備はいいか?」

 「えぇ、いつでも。」

 「スターク、合図をくれ。」

 「わかった。」

 「それでは模擬戦、始め!」

一方その頃、東部にいる氷室は団員の一人である赤羽竜太郎《あかばねりゅうたろう》を連れてある場所根向かっていた。

 「師団長どこに向かっているのですか?」

 「まぁ変なところには連れて行かないから安心しろ。変な人には会うけどな。」

 「変な人?」

 「あっ、ちょっとスーパー寄るな。買いたいものがあるから。」

 「はい。」

氷室はスーパーに寄って大きな袋2枚分のおにぎりやお惣菜、パン・飲み物を買って戻ってきた。

 「なんですか?その大量の食べ物は。」

 「手土産だよ。それじゃあ車出すぞ。」

氷室は再び車を走らせ、到着したのは総司令本部だった。

 「ここは総司令本部じゃないですか。総司令に会うんですか?」

 「いや、総司令じゃないぞ。まぁついてこい。」

竜太郎は氷室の後についていくと、氷室は総司令本部には入らず300mくらい離れた小さな建物に入っていった。建物に入るとそこには物どころか窓すらなくただ四方を壁に囲われていた。

 「なんですかここは?何もない。」

 「えぇ~と確かこのあたりに。おっあったあった。」

氷室は建物の中央まで行き、床にあった紐を引くと地下へと続く階段が現れた。

 「よし。行くぞ~。」

 「あっはい。」

階段を下りていくこと約5分、たどり着いたのは銃や刀、ガントレットなど様々な武器が大量に保管されている部屋だった。

 「ここは武器の保管庫ですか?」

 「ちょっと違うな。ここは武器の製作所だ。ここで全師団員が使う武器から副師団長とか各隊の隊長の専用武器なんかも全部ここで作られている。」

 「へぇ~そうなんですね。それでここに来た理由というのは?」

 「あぁ、竜が隊長になってから1年たったろ。だから、そろそろ竜にも専用武器を作ってもらおうと思ってな。」

 「まじですか!遂に俺にも専用武器を作ってもらえるんですか?」

竜太郎は驚きのあまり氷室の肩をガッチリつかみ、そのあと、嬉しさのあまり全力のガッツポーズをした。

 「まぁそういうことだ。起きてるかな?お~い!む~ちゃ~ん!」

 「なんだい大きな声出して。えぇ~っと誰だっけ?」

氷室が大声で誰かを呼ぶと、部屋の奥から上下スウェットにサンダル、スウェットの上から白衣を着た長身の女性が気だるそうに出てきた。

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