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第1章5話 制御室の攻防 忍び寄る何か

悠が千秋から送られてきた地図を頼りにオペレーター棟へと走りだした頃、他の生徒はペアとの通信が繋がらず困惑していた。

 「姉崎さん姉崎さん。クソ、繋がらない。何があったんだ。とりあえず誰かと合流して情報を交換しないと。」

 「悠さん。誰かに協力を要請しなくていいのですか?やっぱり一人では危険です。」

 「そうしたいのは山々だけどできないんだ。協力要請するには直接会うしかない。ここ無駄に敷地面積広いし、直接会っては時間がもったいない。」

教官の言ったルールのほかに細かなルールがいくつかあり、そのうちの1つに戦闘員同士の端末での連絡禁止がある。連絡を取るには直接会わなくてはいけないが学校と立ち入り禁止区域を合わせは総敷地面積は約30ヘクタール、東京ドーム6.5個分に相当する。その中から残りの99人を探すのは運がよくない限りかなりの時間をロスする。

 「そんなルールがあったんですね。」

 「まぁ戦闘員にしか適応されないルールだからね。幸い武器はかなりあるみたいだ。何とかなりそう。」

悠の戦闘スタイルは近距離タイプ。特に刀などの刃物を扱うのに長けていた。この時点で悠は、刀1本とナイフを2本を調達していた。

 「わかりました。後どのくらいでオペレーター棟に着きますか?」

 「このままのペースで走ってたら早くて5分かな、もう少しかかるかもだけど。」

 「では、2分ください。オペレーター棟の玄関から制御室までの最短ルートの地図作成を終わらせます。」

 「ありがとう、お願いね。」

悠がオペレーター棟に到着する5分前、学校内を彷徨っていた翔は立ち入り禁止区域内である人物と合流していた。

 「あっおーい、向日葵!」

 「翔よかった。ねぇオペレーターと通信がつながらないのだけど何か知らない?」

 「わからん。俺も困っていた。」

 「もしかしてだけど、オペレーターの機器類に問題があったんじゃ。」

 「!そうかも。じゃなきゃ合同訓練の意味もないしな。とりあえず、オペレーター棟に行ってみるか。ここからだと全力で走って大体20分はかかるな。」

 「でも行かないと。このままってわけにもいかないでしょ。」

 「だな、サポート頼む。」

翔の戦闘スタイルは超至近距離タイプ、向日葵は中遠距離タイプ特に拳銃などの中距離が得意だった。
2人は向日葵の武器と弾を拾いながらオペレーター棟へと向かった。その頃、悠はまもなくオペレーター棟に到着するところだった。

 「悠さん、最短距離の地図ができました。端末に送ります。」

 「ありがとう千秋さん。こっちももうすぐ着くよ。」

数分後、オペレーター棟に着いた悠は突入を始めた。

 「千秋さん棟に入ったよ。今正面玄関にいるけどこの棟全体の電気もやられてるわ真っ暗。ナビゲートお願いできる?」

 「はい。任せてください。」

初めて会った時に比べたら自身に満ち溢れていた。悠はナビゲートしやすいように電話をテレビ電話に変え、スマホのライトをつけた。

 「それじゃあ、行くよ。」

悠は地図と千秋にナビゲートを頼りに制御室へ走り出した。

 「20メートル先右折、その後10メートル先左側に階段があるのでその階段を下りてください。地下3階まで下りたらもう少しです。」

言われた道をたどり、階段に差し掛かった時にある光景が2人の目に飛び込んだ。

 「なんですか、この戦闘ロボットの数多すぎます。」

そこのはワニ型の魔物想定のロボットが見ただけで30機以上いた。まるで制御室を守るように配置されていた。

 「どうしますか?別のルートでいきますか?」

 「いや突っ切る。」

悠の意外な回答に千秋は動揺した。

 「多分、他のルートもこれと同じくらい配置されてるだろうし、別の道を探す時間がもったいない。大丈夫、まともに攻撃を食らわなければポイントは減らない。」

 「それに早く機器類を復活されないと起動できたとしても他の不具合が起きるかもしれない。だから突っ切る。大方制御室にいるロボットがどんなやつかもわかったし時間をかけるわけにはいかない。」

悠は両腿につけていたナイフケースからナイフを取り出しかまえた。

 「えっ?どんな奴なんですか。」

 「候補は2種類。特殊な音波を発して不具合を起こさせる系コウモリとか。もう1つは単純に電気を奪ったり放ったりする系、こっちが本命かな。多分、電気ウナギとかだと思う。」

悠は千秋に説明をしながらワニ型の攻撃をナイフを使って紙一重でかわしている。悠は生まれながら五感が他の人より優れていた。そのため、機械音を聞き分け攻撃をかわす程度なら容易にできる。しかし、数が多いためかなり苦戦をしていた。

何とか地下3階へ降り、ワニ型を振り切り制御室へ向かった。

 「千秋さん後どのくらい?」

 「まもなくです。その角を右に曲がって2番目の扉です。」

制御室へ到着し、扉を蹴破った。そこには制御装置に尻尾を突き刺し、電気を奪っている電気ウナギ型のロボットがいた。

 「やっぱり、あの尻尾で制御装置の電気を奪っていたのか。千秋さんどうしたら元に戻せる?」

だが、彼女からの返事はなかった。気になって端末を見てみると、画面が乱れており電波障害のようになっていた。

 「確かに、電気ウナギ型は放電しているが学校支給の端末は放電しているくらいでは障害を起こさない特別製のはず。」

次の瞬間、悠は視界がぼやけてまるでお酒に酔ったかのようにふらふらし始めた。

 「どういうことだ?平衡感覚がつかめない。さっきから変な音も聞こえるし。・・・まさか!」

ふらふらの中天上を見ると、そこには2体のコウモリ型が天井にぶら下がっていた。

 「まじか、変な音はこいつらか。こいつらをどうにかしないと千秋さんと通信ができない。」

 「しかも、この音のせいで他の音が聞き取りずらい。」

この時にはワニ型との戦闘時に使っていたナイフが刃こぼれしており、刀1本しか残ってなかった。

 「まずは、どうにかしてあいつらを地上に引きずり下ろさないとな。」

悠が制御室に突入する少し前、翔と向日葵は向日葵の銃弾を拾いながらオペレーター棟へ向かっていた。その途中、向日葵がある違和感に気付いた。

 「ねえ、戦闘ロボット全然いなくない?」

 「確かに、さっきから全然遭遇してない。移動距離からして何体か遭遇しててもおかしくないのに。」

疑問に思いながらも先に進むと、何かが倒れているのを見つけた。見てみると犬型の戦闘ロボットの群れだった。

 「え?もう誰かがこんなに倒したの?」

 「いや、多分俺ら戦闘員じゃないな。」

ロボットの異変に気付いた翔が言った。

 「よく見てみろ。殴る蹴るの物理攻撃でも、刃物や銃での武器による攻撃でもこうはならない。これは明らかに噛み千切られている。」

 「噛み千切る?誰がそんなことができるのよ。」

 「わからない。しかもほとんど一撃だ。」

 「ねえ、翔あれって。」

向日葵が指をさしたほうを見てみるとそこには小さく広がった黒い霧があった。本来、魔物が襲来するときは複数体で襲来する。そして、襲来する数に応じて黒い霧も大きく広がる。黒い霧は大きなエネルギー体のようなものであるため広がれば広がるほど感知しやすくなる。

 「この大きさだと多分感知されない。しかも、1体だけで来てる。」

 「1体って相当強いんじゃ。」

 「だろうな。でもまずは、オペレーターの機器類をどうにかしないと教官たちも気づいてないかもしれない。警報が鳴ってないから。」

 「そうね、オペレーター棟へ行きましょう。」

翔と向日葵がオペレーター棟へと向かって言ったころ、悠はコウモリ型に苦戦を強いられていた。超音波で平衡感覚が奪われ、薄暗い中で視覚が遮られ、コウモリ型の超音波により聴力も機能していなかった。

 「やばいな。こいつらのコンビネーションもばっちりじゃねえか。本当にロボットかよ。片方の攻撃をよけてももう片方が死角から攻撃してくるし。」

その時、悠は閃いた。

 「成程ね、そういうことか。」

悠は、突進してきた1体の攻撃をあえて左手で受け、残った右腕で死角から攻撃してきたもう1体の片方の翼を切り落とし、首を切断した。首を斬り落としてすぐに、もう1体の足をつまみ床に叩きつけてから胴体を切断した。

 「お前らはコンビネーションが完璧すぎた。俺が攻撃をよけると必ず俺の死角から攻撃を仕掛けていた。だがな、完璧なコンビネーションは片方が崩れれば簡単に崩壊する。ってロボットに行ってもわかんないか。」

悠は制御装置から電気を奪っていた電気ウナギ型を切り、制御装置のスイッチを入れた。すると、耳に着けていた通信用イヤホンから通信がきた。

 「悠さん大丈夫ですか?」

 「千秋さん、うん大丈夫そっちは不具合はない?」

 「はい、順調に動いています。」

 「よかった。でも、だいぶ食らったからポイントが相当減ってるかもって、え?」

 「どうしました?」

悠が端末でポイントを確認してみると、ポイントに変動がなかった。

 「あれー?やられてる?」

後ろの扉から声が聞こえ振り向くと、明らかに生徒でも教官でもない人獣型のような魔物が立っていた。

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