殺意
「たく、結婚なんて、口にしなかったら、もう少し遊んでやったのに」
首を絞め、ようやく動かなくなった彼女を見下ろして、ふぅと一息つく。まだこれからだ。この死体を何とかしないと。俺はすぐ、スマフォを取り出し、彼女に電話した。
「ん、やっと話しついたの?」
電話の向こうの彼女は俺が上手く別れ話をまとめたと思ったようだ。
「いや、まずいことになった」
「なに? あの女、妊娠でもしてたの?」
「そうじゃなくて、なかなか、別れるのに納得しなくて、ちょっと喧嘩になっちゃって、弾みでやっちまったんだよ」
「は? 暴力振るって、警察でも呼ばれたの?」
「だから、殺しちまったんだよ・・・」
「あんた、バカ、何やってるのよ」
「助けてくれよ、死体をどこかに捨てるの手伝ってくれるよな」
「私に、殺人の手伝いをしろって言うの?」
「おい、俺が捕まったら、お前が俺をそそのかして、殺したって言うからな?」
「は? 私は、きっちりその女との関係を清算して欲しいって言っただけでしょ?」
「世間は、お前が黒幕って噂するんじゃないか、そうなったら、困るだろ。だから、死体を片付けるの手伝ってくれるよな」
「・・・しょうがないわね。ちょっと待ってなさい」
「こんな山奥に、これだけ深く掘れば、見つからないよな」
「ええ、おかげで、泥だらけじゃない。この靴、買ったばかりだったのに」
「悪かったよ。さっさと、埋めて帰ろう」
「ええ、その前に・・・」
「な、なんでスコップを振り上げてるんだよ、お、おい、ゲッ」
「あんたも、その女と一緒に埋まってなさい。あんた、私が死体を埋めたのを手伝ったことをネタに一生自分の女扱いするつもりでしょう。誰が、殺人犯の彼氏なんかになるか。よかったわね、ひとりじゃなくて、一緒に仲良く埋まってなさい」